第10話再び異世界へ

「あれとこれと、ついでにこれも……おっといけない、あれを忘れるところだった」


 サエちゃんと分かれてマイルームに帰ってきた俺は、買い出ししてきたものを配達バッグに詰め込んでいく。


 本来ならとっくに持ち上げられる限界以上の荷物を入れたのに、バッグ自身の重さしか感じないのは本当にありがたいね。


 ……そういえば、中に物をいれた状態で折り畳んでも大丈夫なのかな? できるなら日本で買い物する時も便利なんだから今度試してみよう。


「よし、それじゃあレッツラゴー」


 ムムムンと念じて、再び異世界へ。


 初めて来た時と同じように、えっちら歩いてマジリハへ。いきなり町中に転移して誰かに見られたりしたらやばいからね。


 うーん、安定して稼げるようになったら転移用に部屋を借りたりするのもありかな。さすがに毎回歩くのはけっこう大変だしな。


 昨日ぶりのマジリハは相変わらず賑やかで、賑やかな大通りには多種多様な店が軒を連ねている。


 オレはそんな店を横目でチラ見しながら、孤児院へ。


「あ、店長ー!」


 孤児院の前では、ポーシャが手を振りながらオレを出迎えてくれた。


「待たせたかな? 悪い、遅くなって」


「い、いえ、わたしも今ちょうど出てきたばかりですから」


「そうかそうか、とりあえず院長さんに挨拶に行こうか」


「分かりました!」


 ポーシャに案内されて院長に会ったオレは、お土産として日本で買ってきた米や塩、カンパンにトウモロコシなんかをプレゼントした。


 米はお粥にすればかなりの量に増えるし、トウモロコシはパンにしてもいいしそのまま茹でたり焼いたりしても美味しい。品種改良されまくった甘いトウモロコシは実は海外ではなかなか食べられない日本の自慢の一品なんだよなー。


 めちゃくちゃ感謝してくれた院長から、情報収集もきっちり行った。


 マジリハで屋台を出すには商業ギルドで登録が必要だそうなので、オレとポーシャの2人で登録しに行った。


「路上での屋台ですと、税金と手数料として1か月ごとに銀貨2枚になりますがよろしいでしょうか?」


 銀貨2枚……2万円か。正直高いか安いか分からない。


「ちなみに、そちらのポーシャさんがされていたような立ち売りであれば無料です。屋台ですと場所に関わらず一律で銀貨2枚。持ち店舗ですと規模によって大きく変わりますが最低銀貨5枚からとなります」


 ほほう。屋台が2枚だと考えると、実店舗での5枚はかなり割安な気がするな。まあ、実際には他にもいろいろと経費はかかるんだろうけどさ。


 これは、できるだけ早めに店舗持ちを目指したほうがいいかもしれないな。


「分かりました。銀貨2枚、よろしくお願いします」


「はい確かに。商売の成功をお祈りしておりますね」


 必要書類に記入して銀貨を支払うと、銅色のカードを渡された。


「これは?」


「商人ギルドに登録している証になりますので、なくさないように注意してくださいね」


「店長、わたしも持ってますよ」


 ポーシャが見せてそう言って取り出したのは、木製のカードだ。


「ポーシャさんは立ち売りのカードをお持ちだったんですね。屋台や露天は銅、店舗持ちの中規模商会までは銀。大規模商会になると金のカードになりますので、頑張って目指してくださいね」


 金、銀、銅とかまるでオリンピックみたいだな。


 とりあえずのところ、目標は銀かな。日本での生活もあるし、さすがにそこまで時間をかけられないもんな。


 オレとポーシャが不自由ない生活が出来るくらい稼げれば御の字ってやつだ。


 ちなみにポーシャのカードは解約することにした。


 全力でオレの手伝いをして繁盛させるからもう必要ないのだそうだ。


 ううむ。責任重大だなこれは。

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