第5話テンプレ

 やべえ、やべえよ。


 気分は海外旅行でひとりきりで危険地帯に取り残された気分。


 町行く人がみんかヒャッハーな人に見え……たりはしないな、うん。


 質屋で手に入れたのは銀貨25枚と銅貨10枚。外国からの旅行者を装って(まあ事実そうなんだけど)いろいろ聞いてみたところによると、だいたいパン1つが銅貨1枚で買えるそう。


 ランチのセットなら銅貨5枚から10枚ということなので、おおよそ1枚あたり100円といったところだろう。


 その銅貨が100枚で銀貨1枚、約1万円。さらに銀貨100枚で金貨1枚、約100万円。


 つまり今俺は25万1000円の貨幣を持っているってことだ。ブラックとは言わないまでも安月給で働いていて、今は個人事業主として先の見えない生活をしている身分としてはとんでもない大金だ。


 そんな時


「おい、そこの兄ちゃん」


「ひゃ、ひゃいッ!」


 いきなりどこかからかけられた声に、全身に鳥肌が立って冷や汗がドバドバで目が泳いで声が裏返ったのはしかたないと思うんだ。何しろそんな状況なわけであるからして。


「お、おう……ずいぶん驚かせちまって悪かったな。兄ちゃんフラフラしてたからうちの串焼きの余りモンでよかったら食って体力つけてもらおうと思ってよ」


「え、いいんですか?」


「おう。兄ちゃん見慣れいかっこしてるし、おおかたどっか遠くから来た旅人か商人だろ? どうみても冒険者には見えねえもんな。遠くからわざわざ来てくれた奴を腹すかせたままほっといたりしたらマジリハの男の恥晒しよ。遠慮せずやってくれ」


「あ、ありがとうございます。実は腹ペコだったんですよ」


 差し出された串焼きを受け取ると、夢中でかぶりついた。


 んー、肉の味そのものは悪くないんだけど、少し硬いかな。それに味付けが感じるか感じないかの塩味だけじゃ……いや、本当に悪くはないんだけどね。


「ごちそうさま、ありがとうございました。今度はちゃんとお金を払って買いにきますね」


「おう、そんときゃたくさん買って行ってくれよな」


 俺は串焼き屋のおっちゃんに礼を伝えてまたブラブラ町を歩いて見て回った。


 肉やパンを売る屋台の他にも、魚の塩焼きなんていうのを出してる屋台まであった。あれはたぶん湖で釣った魚なんだろうなー。なんて魚だろう? 鮒とかかな。


 淡水魚っていうとニジマスとか鮎くらいしか塩焼きでは食べたことないな。あ、そういえば鰻も淡水魚か。白焼き、旨かったなあ。


 せっかくだから湖まで足を伸ばしてみようかな。


 そんなことを考えていた時――。


 ドサッ!!


 前を歩いていた女の子が、急に倒れたので慌ててかけよっていきました。

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