第4話マジリハの町

「ふんふんふんふんはんはんはんはん、ふーみしーめーてー」


 諸国漫遊で有名なちりめん問屋のご隠居様の曲を鼻歌で唄いながら歩くこと20分。


 日頃原付でばかり移動して運動不足な俺はすでに足が痛くなっております。もう少し運動しないと生活習慣病とかやばいかも?


 と、とにかく異世界で最初の町に到着したよ。


 町は申し訳程度の柵が建てられている以外にはとくに門番がいたりするわけでもなく、普通に入れました。あ、ヘルメットはさすがに怪しいだろうからちゃんと脱いでおきました。


 せっかくラノベを読んで鍛えてきた言い訳スキルを駆使できるかと思っていたのにな。……ごめんなさい嘘です、正直ドキドキしていたから超助かりました。


 入り口に、『マジリハの町へようこそ』って書いてあったのには思わずニヤリとしちゃったよ。俺が子供の頃のRPGだと、たいてい町の名前を教えてくれるNPCや立て看板があったんだけど、最近のゲームはどうなんだろう?


 町並みは、小さくてかわいい家がきれいに並んでいて、ドゥブロヴニクに似ているせいかおもわず黒猫を探したくなるほど。


 清掃もきちんと行われているのか、中世ヨーロッパであったといわれている嫌な匂いもしないのはありがたいね。もしヨーロッパみたいにアレを窓から投げ捨てているような世界だったら即さよならしていた自信がある。だって嫌なんだもん。


 すれ違う人たちも活気があるというか勢いがあるというか、イキイキとしているので町の空気もそれに合わせて明るくなってる印象がある。


 そんなことを考えながら歩いていた時――。


「おー、あったあった」


 これだけの大きさの町ならきっとあると思っていたよ、質屋さん。


 俺はこれまでは使ったことがなかったんだけど、なにしろ今は一文無しだから、早めに現地通貨は手に入れておきたかったんだよね。


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で?」


「えーと、買い取りをお願いします。外国の品ばかりだけど大丈夫ですか?」


「はい、もちろんです」


「よかった。それじゃ、今出しますね」


 配達バッグから、よいしょといくつかの品を取り出してカウンターに並べていく。


 いちおう、マジックバッグになっていることは秘密にしておいたほうがよさそうな気がしたから無理のない量だけにしておいたほうがいいか。


「こ、これは素晴らしい品ですね。それでは少々お待ちください」


 店員さんが特にびっくりしていたのは、今治のタオルのセット。俺が一人暮らしをはじめた時に親戚がプレゼントしてくれたものなんだけど、使うこともないままクローゼットの奥にしまわれていたものだ。


 査定はまだけっこうかかりそうかな? そのあいだはとりあえず店の中のものを見せてもらおうか。


「おお、けっこう面白いものもあるな」


 服や靴、布地などからナイフや短剣、装飾品なんかは見たことのないようなデザインのものもあって眺めているだけでなかなか楽しいぞ。


「ん、あれは……魔道具!?」


 店の一角に構えられた魔道具と書かれたコーナーには使い方がの想像もつかないアイテムが何点か置かれていたけど、値札の0の数がやばいことになってるからかなりの高級品なんだろう。


 そんなこんなで時間を潰していると


「お待たせしました。査定終了しました」


 店員さんに声をかけられたので買い取りカウンターへ戻ると、そこには銀貨がたくさん積まれていたのでした。

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