第3話転移!

 ためしに指輪をはずしてみると、テレビから聞こえてくるのは意味を理解出来ないイタリア語。


 もういちど着けると、まるで日本語で話しているかのように聞き取れるようになった。


 こうなってくると、信じられないけどあの人の言ってたことは本当だとしか思えない。


「異世界、かあ」


 指輪の効果は異世界への行き来と言語理解だと言っていたよな。行き来ということは、よく異世界ラノベであるような二度と戻ってくることが出来なくなるなんてことはないよな。


 指輪の紛失や盗難には充分に気をつけないといけないだろうけど。


「行ってみるか、とりあえず」


 怖い気持ちもあるけど、普通に生きていたら異世界に行く機会なんてまずないもんな。宇宙旅行が高額だけど不可能ではなくなった今、間違いなく異世界旅行のほうがレアリティは高いだろう。


 そうと決まったらとりあえず準備しないとな。


 虫除けに塗るタイプの傷薬、正露丸、着替えにタオル。それから双眼鏡に……とにかく手当たり次第に配達バッグに詰め込んでいく。もはや配達バッグじゃないな。……いや、異世界に持って行くと考えたらそれはそれで配達か。


 カップ麺は……お湯があるか分からないから今回はとりあえずパス。カセットコンロとかもうちにはないからな。


 飴玉と、スーパーで買った食パン(6枚切り)、マーマレードジャム、それから2リットルのでかいコーラのペットボトルを入れてっと。


「よいしょっと」


 靴を履いて配達バッグを背負ってみても、重さは全然感じない。このバッグも、本当にマジックバッグになってしまってるみたいだ。


 出版前に俺流異世界訪問の心得を確認しておくか。


 その1 安全第一、危険な雰囲気を感じたらすぐ逃げる!


 その2 人がいたら笑顔で挨拶、最初の数秒が肝心です!


 その3 置引きやスリには細心の注意。 配達バッグももちろんだけど指輪だけは死守すること!


 よし、これで大丈夫かな。


「それじゃあ行ってみますか」


 バイクのジェットヘルメットをかぶっていつもより少しきつめにあごひもを絞める。


「さて、レッツラゴー……って、古いかさすがに」


 指輪に集中して、転移! と心の中で唱えると視界が瞬時に切り替わる。


 足元がグラッとして少しよろけたが、それ以外は問題はなさそうだ。


「……ここが、異世界か」


 澄み切った青空に爽やかな空気。気温は高めだけど湿度が低いからそこまでは気にならないかな。地球で言えば、ヨーロッパの気候に近いんだろう、たぶん。


 これだけだとあんまり異世界感はない……って、あれはなんだ……? 


 背伸びして――よいしょっと。


 おお、なんか町みたいなのが見えるぞ。


 よし、さっそくレッツラゴー!

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