第20話 五歳から始まる地獄
幼稚園児の私は同い年の子達の中では背が高く、太り気味だった。二歳上の小柄な姉とはよく双子に間違えられたものだ。しかし、身長が大体同じでも、姉の方が小ぢんまりとまとまった感じで「可愛い」と大人たちから言われるのに対し、私は大柄でどんくさい感じが漂う子だった。実際には、性格が大人しくおっとりしていて、幼かったというだけなのだが(この時期の二年間の差は大きい)。
幼稚園で同じクラスだった子達は、男子も女子も大抵私より背が低かった。しかし、ずんぐりむっくりした自分が恥ずかしいとか嫌だとかいう自我が芽生えるのは、もう少し先の話だ。
ある時担任の先生が、男子と女子を整列させた。横一列になった男子は黒板の前に立ち、女子は教室の後ろの黒板の前に立たされた。これから、お遊戯会で男女ペアになって踊る際のパートナー選びをするのだという。背の順ではなかったが、私は端っこの方に居て、遠く離れた教室の端に立つ男子達を順に眺めた。この時はまだ、好きな男の子さえいなかった。
担任の先生は、男子達に対し、こう言った。
「好きな子の所に行きなさい。よーいどん!」
男子達は歓声を上げながら、ただ一点を目指し、そう、私に向かって走ってきた。私は満面の笑みを浮かべていた。
しかし、彼らが向かった先は、私ではなく、隣に立っていた、クラスでは一番背が低くて、モンチッチのぬいぐるみのように可愛らしい女の子だった。
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