第14話 兵士長side噂の従騎士
フォーカス様の従騎士が弓の訓練に弓場に来る話は、俺の所に通達が回って来る前に噂で知った。
あの、従者も従騎士も長いこと持たなかったフォーカス様が、出会って直ぐに従者にしたというだけで大きな噂になった従騎士だ。
もっとも、初めてフォーカス様が砦にシン殿を連れてきた時は、砦中がザワめいた。
シン殿は見慣れない容姿をしていた。
真っ黒なのにキラキラと光を纏うようなサラサラと揺れる黒髪に、吸い込まれそうな黒い瞳。
肌は我々とは違う、クリーム色というか、艶めいた感じだ。
従騎士という事だったが、歳の頃は14、5才に見えた。だが従騎士ならば17才以上にはなっているはずだ。
フォーカス様のシン殿への執着は側から見ても怖いほどだったが、シン殿と関わる者が少ない事もあって、謎のベールに包まれていた。
それよりも驚かされたのは、フォーカス様だ。
元々、他人とにこやかに談笑する方ではなく、寄って行きたい人は多いのだろうが、どちらかというと人を寄せ付けないお方だった。
ところが、シン殿を前にした時のフォーカス様の緩み具合は、見てはいけないものを見たような、なんとも言えない気持ちを生じさせた。
口さが無い奴らは、シン殿の具合がよっぽどイイのではないか、などと言う者もいた。
しかし偶然にもシン殿の弓引きを見た兵士は、揃ってフォーカス様のお目の高さを称えたのだ。
そんな噂もあって、多くの兵士がシン殿の弓を見に来たのだろう。
目の前に居るシン殿は、キラキラと目を輝かせて真っ直ぐに私を見つめてきた。
こんな眼差しはこの砦では出会うことがない。誰もが子供の頃に持っていただろう純粋な眼差しだ。
こぽりと溢れる様な慈愛を感じる微笑みは胸に響き、隣の年若いカークなんぞはすっかりのぼせあがっていた。
調子に乗ったカークの実力以上の弓の模範の後で、興奮したシン殿はなぜかカークの腕を触りたいと言い出した。
この国では他人の身体に触れたい、見たいとアピールするのは好意を示して、閨を共にしたい時だ。
冷気を発するフォーカス様から許可をもらい、シン殿はカークの身体の筋肉とやらを撫でさすって、揉んで掴み、その上背中や腹までやり出した。
見てるこちらも気まずいが、やられてるカークはすっかり身体が熱くなってきてるようで、赤くなったり、青くなったり忙しい。
気づけばフォーカス様まで近くにいらっしゃってこちらを睨んでいる。
ああ、シン殿は我々を文字通り殺すつもりなのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます