第15話 カークside可愛くて危険なシン

兵士長に呼ばれた瞬間感じたのは、喜びだっただろうか?


砦中の噂の的であるフォーカス様の従騎士が弓の訓練に来ると聞かされた時は、その噂の腕前を見てみたいと言う純粋な気持ちだったのに。

まぁ、ちょっとは噂の御仁を見てやろうと言う好奇心もあった。



俺の前に佇む従騎士は、従騎士というには少々小柄で細っこい。

しかもその従騎士が動くとなぜかずっと見つめていたくなる不思議な魅力を感じる。


兵士長と俺に随分丁寧な挨拶をしてくれたシンという名の従騎士は俺たちより若いのだからシンと呼べと言い募る。

若くてもフォーカス様の従騎士なら俺たちより地位は上だし、貴族なんじゃないかな?


くすぐったい気持ちでシン君と呼ぶと、真っ直ぐなキラキラした吸い込まれそうな黒い瞳を柔らかめて、微笑んだ。


うわぁ、何だこれ。俺は何か今すぐ遠くに走って行きたくなった。



シン君の前で弓引きを見せることになった俺は俄然張り切った。あの真っ直ぐな目が俺だけを見ているんだ。


結果は絶好調で、兵士長にからかわれる始末だ。ふぅ、上手くできて良かった。


シン君は興奮して、俺の腕を触りたいととんでもない事を言い始めた。

兵士長と俺は焦ったがフォーカス様の許可が降りたので、シン君は楽しそうに何やらぶつぶつ言いながら俺の腕を触った。



あれ?シン君⁉︎そこは俺の背中だけど…。ああ!脇は弱いのに…。ああ、シン君いい匂いがする。サラサラした黒い髪が俺の頬に触れそうだ…。やばい。あそこが反応しそう…。


ギリギリ危ない所でシン君はお礼を言って離れた。

俺がほっとする間もなく、兵士長の緊張からフォーカス様がやばいオーラを撒き散らしながら近づいてきたのが分かった。


しかもシン君がよりにも寄って大きな声でフォーカス様に言ったんだ。



俺の裸が見たいって!


俺は嬉しいやら、苦しいやら、怖いやらでほとんど記憶がない。うん。


ただ、フォーカス様が見逃して下さった事に感謝した。間一髪死を免れたはずだ。



シン君の弓引きは素晴らしかった。どこがどう違うとはいえないけれど、明らかに俺たちの弓引きとは違って見えた。


シン君は僕の方を見て凄く嬉しそうな顔で成果を報告してくれるものだから、俺はシン君の矢は戦場でも活躍できる的なことを言ったんだ。



途端にシン君は急に俯いて、青ざめ始めた。

フォーカス様は訓練を終わりにしてシン君を連れていったけれど、何かあったんだろうか。


それにしてもシン君は可愛いとしか言えない存在だけど、俺に言わせると人を翻弄する危険な人だと思う。


だってそれ以来、俺の夢の中にシン君が出て来て、俺はフォーカス様が怖いやら、シン君が可愛いやらで悶え苦しむ事になったんだから。



はぁ、また会いたいなぁ。

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