第34話 おやすみなさい
一方的に言って、ファンゲイルは消えていった。
なんだったんだろう。忠告というよりは、本当に私を勧誘しているように感じた。
(でも、王国を滅ぼそうとしてる人の仲間になんてなれないよ)
アレンたちを守るためには、結局ファンゲイルと敵対する道に行く他ない。
侵攻をやめる気などさらさらないようだった。ならば、力づくで止めるしかないのだ。たとえ、その後人間に受け入れられず王国を去ることになるのだとしても、心まで魔物になるつもりはない。
(なにより、変態魔王の配下になったら絶対変なことされるよ!)
だって骨を愛おしそうに抱きしめて歩いてるような男だよ!?
貴族もちょっと常人離れした嗜好をもつ人はいたけど、ファンゲイルに比べると正常に見えてくる。
ファンゲイルを止めるという当初の目標はそのままに、すべきことを整理してみる。
まずは、なによりも進化だ。レイスのままだと相変わらず喋れないし、人間に怖がられることが分かった。それに戦闘能力という点でもやはり足りない。
協力者も必要だ。レイニーさんたちが戻ってきてくれるのが一番なんだけど……。アンデットの集団を相手取るのに、ギフテッド教の神官以上に適正のある者はいない。冒険者の中にも聖属性に関連するギフトを持つ人もいるかもしれないが、数は少ないと思う。
アレンにも引き続き頑張ってもらいたい。二人でみんなを守るんだ。さっきの攻撃はただのポーズだって分かってくれるよね?
あとは会いたくもないけど、王子や貴族にも対応してもらわないと。小さい頃から鍛錬を積み、宮廷剣術を習得している騎士団も相当な戦力になるはずだ。問題は、王宮内の警備や護衛が仕事だから外に出たがらないところ。魔物との戦闘経験もなさそうだ。
(なんか、いろいろあって疲れちゃったな)
肉体的にはともかく、精神的にどっと疲れが溜まっている。魔力も心元ないし、今日は休もう。
私はその場でうずくまり、夜明けまでじっとしていた。この身体になってから眠ることができないけど、何も考えずぼーっとしていると少しずつ意識が解けていった。熟睡ってわけじゃないが精神的に少し休めていると思う。
あーあ、もっと生きていたかったな。
アレンカッコよくなってたな。生きていたら、結婚とかできたのかな。
ちょっとばかり後悔に苛まれながら、夜が更けていった。
(私、復活!!)
悩んでても仕方ないよね!
一晩で無事復活しました。生前も、寝たら嫌なこと全部忘れて気持ちよく起きれるタイプだったもん。
朝ごはんとして、その辺にいるスケルトンを美味しくいただく。
昨日よりも街道の魔物増えてるね。兵士や冒険者が常駐している大きな街ならともかく、農村とかだと被害が出ていてもおかしくない。それに、街道が通れなかったら行商ができなくて物資が不足する。
そろそろ王都でも事態に気が付いたころかもかな?
カールは報告してくれると思うし、あちこちから魔物が増えている報告は上がっているはず。あの王子には全く期待してないけど、宰相や騎士団長はまともな人だったような気がする!
(さて、行動開始! そういえば、次の進化条件はどうなってるんだろ。神託)
まだ素材が足りていない可能性も高いと思ってたけど、意外にも天使様の声が進化条件を教えてくれた。
『進化系譜
進化先候補
デスレイス(D+) 進化条件:レベル30 必要条件:敵意
ファントム(C) 進化条件:レベル40 必要条件:未練』
(おおお!)
明らかに人類の敵コースのデスレイスは置いておいて、ファントムは結構いいんじゃない!?
はいはい! 未練あります! あんまりなかったけどアレンと会って湧きだしました!
もう少しレベルを上げれば進化できそうだ。現在34だから、街道の安全確保をしながらレベルを上げよう。
今回は魂集めしないで良さそうだね。お腹空くから食べるけど。
(よし、私はファントムになるぞ!)
聞いたことも見たこともない魔物だ。きっと人型になれると信じて!
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