第7話 楽しくなってきた!

 初めての遭遇こそびっくりしたけど、ヒトダマに代わる獲物としてスケルトンは最適だった。

 無数にいるから倒しきってしまう心配はないし、慎重に戦えば負ける心配もない。


 唯一注意しなければいけないのは、私の魂をごっそり削ってきたあの攻撃だ。


『お告げ

 種族:スケルトン(E)

 種族スキル:ソウルクラッシュ』


 ソウルクラッシュ、魂に直接ダメージを与える攻撃だ。物理攻撃が効かないはずの私にも、しっかりダメージを与えてきた。

 オニビより一つ高いランクなだけあって、ホーリーレイがなければ倒すのが難しかっただろう。


 神託は敵の情報もしっかり教えてくれるから助かる。神官や聖女のギフトが重用される理由がこれだ。人間のギフトを知ることでその人の適正を示し、魔物のスキルを暴き戦闘を優位に運ぶ。


(だんだんコツを掴んできたなー)


 魔力が半分くらいまで減ったら洞窟まで戻り休憩、回復したら倒す。というサイクルを繰り返していた。

 何度かソウルクラッシュを受けてしまったが、幸い生き残っている。


 魔物、とりわけアンデッド系を弱体化させる聖域を使うことで、ホーリーレイ一発で倒しきれることが分かった。聖域の方が魔力消費は大きいけど、スケルトンが密集しているところに展開することで効率アップだ。

 聖域の範囲は籠める魔力によって変わるので、だいたい大人五人が立てるサイズにしている。


(聖域。ホーリーレイ。ソウルドレイン!)


 テンポよくスキルを使って、人骨スケルトンを倒した。

 人間にも魔物にも共通してレベルという概念がある。これは肉体の成長とは関係なく、魔物を倒すことで上がるのだ。レベルが上がると魔力量や身体能力が上がり、平たく言うと強くなる。


 魂がなくなったスケルトンがその場に崩れ落ち、私のレベルが上がった。


(二日間戦ってレベル10かー)


 ワンランク上の敵と戦っているからか、ヒトダマの時より成長が早い。


 スケルトンはソウルクラッシュだけは危険だけど、動きは遅いし単調だから弱い魔物の部類だ。たとえば成人男性がこん棒でも持てばまず負けない。

 ただの骨だからね。ヒトダマが中に入って動かしているらしいけど、筋肉もなにもないから脆弱だ。


(そういえば、私でも骨動かせるのかな?)


 ふと、そんな考えが浮かんだ。


 思いついたことは試してみよう!

 ヒトダマから進化したオニビであれば、骨に取り憑いて動かせるかもしれない。


 たった今倒して物言わぬ亡骸になった骨に、恐る恐る近づく。

 スケルトンとして動いている間は気にならなかったけど、これって人間の死体なんだよね……? いや、モンスターはどこからともなく現れるから、生まれた時から骨なのかもしれない。


(えーっと、こうかな?)


 頭蓋骨をすり抜けて、中心に入り込んだ。眼窩から外が見える。

 魔力を放出して、骨に染みこませるように流した。


(うごけーーー)


 もし肉体があったら拳を握りしめて踏ん張っていただろう。骨を動かせたら、ついに私にも身体ができるんだ!


 しかし、骨はびくともしなかった。


『種族:スケルトンへの進化条件を達成しておりません』


 天使の声だ。

 母性溢れる女性の声である神様に対し、天使様は爽やかな青年の声で静かに告げた。

 進化条件?


(なんだろ……神託)


『進化系譜

 進化先候補

 キツネビ(F+) 進化条件:LV20

 スケルトン(E) 進化条件:LV20 必要素材:遺骨』


 スケルトンの項目が増えてる!

 なるほど、レベルだけじゃなくて他にも条件がある場合があるんだ。スケルトンの場合は骨が必要、と。


 オニビになってすぐ神託をしたときは、スケルトンの表示はなかった。今まで聞こえなかったのはなぜだろう。

 骨を動かしてみよう! という私の行動が進化先候補を増やしたのかな?

 それとも、骨が近くにあるから候補として現れたのかも。


(なんか楽しくなってきた!)


 人間は進化なんてしないからね!

 身体そのものが変わっていく。しかもそれを選べるっていうのは、魔物ならではの感覚だ。せっかくだから楽しまないとね。

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