高みへ積み増して
シヨゥ
第1話
「バリバリ働いて、峰岸はすごいな」
同期との飲み会で横になったのが営業成績トップの彼だった。
「たまたまさ。たまたま」
「謙遜しちゃって。俺なんて逆1位ばかりだ」
彼とは対照的に僕は営業成績がすこぶる悪い。どんけつ最下位か二番手かといったところをうろうろしている。
「頑張っていると思うけどな。誰より外に出て、誰より遅く帰ってさ」
「そんなことないない。なんでそんなに働いて成績が上がんないんだ。って課長に怒られたばかりだよ。営業目標も未達未達また未達。どうせ届かないなんて思い始めてるよ」
「それはまずいな」
「だろ? どうしたらうまくいくのか教えてくれよ」
「といっても、先輩に教えてもらった基本を忠実に守っているだけだし」
「それは基本として、やっぱりなんかあるだろ」
「そうだな……あえて言うなら大物を狙わないかな」
「大物を狙わない?」
「そう。大物になればなるほどさ、結果になるまでの時間が長くて、それでいてポシャることも多いし、こちらのハンドリングが上手くいかないなんてざらなんだよね。これって賭ける労力に見合わないことが多いなって思ったんだよね」
たしかに初期の頃は僕よりも下に彼は居たはずだ。
「だから小物をかき集める方向にシフトしたんだ。一個一個は小さくても、積み上げていけば大物と大差ない成果にはなるからさ。それに取引の回転が早くなる分だけ信頼の積み増しも早くてさ。信用を勝ち取っていけるなって感じているんだよね」
「なるほどな」
「それに取引が1回転すると経験値がも増えるような気がしていてさ。成長にもつながるのかななんて」
「なるほどなるほど。すごく参考になった。ありがとう。ちょっと考え方改めないといけないな」
「考え方を改める?」
「そう。大物釣って先輩を見返してやろうとかそういう考え方をね」
「あーだから」
成績が低迷する理由はここにあったようだ。
小さいものを積み上げていく。いつまでも積みあがらない大きなものよりは、そんな小さなものを追いかけるほうが大事なのかもしれない。
高みへ積み増して シヨゥ @Shiyoxu
ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?
ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます