28-4 揺蕩う少女
あったかい。
誰かが優しく頭を撫でている気がする。
ふわふわの羽毛に包まれているみたいな心地だった。心の底から安心して、揺蕩うような眠りに誘う柔らかなぬくもり。
白い闇。人肌の海。
一人寂しくて眠れなかった夜にぎゅっと抱き締めてくれたおばあちゃんや、ハンドクリームみたいに優しさを塗ってしっとりとした手で頭を撫でてくれたおじいちゃんの体温によく似ている。絶対無敵の味方を手に入れて、わたしは無防備な眠りへと落ちる。
とてつもなく、気持ちが良い。
いつまでも、このままでいたい。だめかな。いいよね。このまま、眠ってしまっても。
白い闇にぼんやりと浮かんだ影が微笑んだ。いいよって言ってる。ずっと眠っていて良いんだよって、花のように甘やかな声で。
弛緩する頭。力の入らない手。全身の感覚が徐々になくなっていく。
うん、いいよね。だって、ねむたいよ。
いままで、たくさんたくさん、がんばってきたんだよ。
少し呂律が回らない輪郭のぼやけたわたしの声が遠くで響く。その声が再び耳からわたしの中に戻ってきた時、ふと、首を傾げた。
あれ、わたし、なにをがんばってたんだっけ。
何かが閃きそうになった。けれど、その光はすぐに消え去って、何も疑問に思わなくなった。
まあ、いいか。もう、なにもかんがえなくて、いいよね。
おやすみなさい。
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