第3話 狐面の少年・雅久
3-1 蚊帳の外
気まずい雰囲気のまま、三人は山の
「大分歩いたし、腹も減っただろう。帰ったら文子に何か用意させようか」
ぎくしゃくとした空気を変えるように、正芳が提案した。未咲はそれを有り難く受け入れ、にこりと笑った。
「ありがとうございます。実は、とてもお腹が減っていたんです」
「そうかそうか」
正芳は笑顔で大きく頷いた。それは毒気のない笑みで、何かを隠されていようとも到底悪い人間には見えない。未咲は
正芳と未咲でたわいもない話を続けているうちに山坂が終わった。村を囲む丸太柵の前まで来た所で、雅久がぴたりと足を止めた。正芳と未咲もまた、立ち止まる。
「では、俺はこれで」
「ああ。ありがとう、雅久」
正芳が頷くのを確認した後、雅久は身を
「雅久は村の外れに住んでいるのだよ」
「え?」
どうして、と未咲が尋ねる前に、正芳は柵の内側に入るよう未咲を
「あの、もしかして村を守ってくれてるって話と関係ありますか?」
「そうだな」
同じく柵の内側に入った正芳は頷いた。
「でも、この柵は村を守る結界……なんですよね? その、大丈夫なんでしょうか。危ないんじゃ……」
「雅久なら大丈夫だ」
正芳ははっきりと言った。その声と表情からは強い確信が見て取れて、何故断言出来るのかと未咲は正芳を
また自分は
未咲はよし、と一人気合を入れた。此処で
「村の者たちへは後日紹介しよう。村の暮らしに慣れるまで大変かもしれんが、何か困ったことがあれば遠慮せず教えてくれ」
「ありがとうございます」
「疲れているだろうに、立ち話を続けてしまってすまなかったな。早く家に戻ろう」
正芳は未咲の背中を軽く押して前に進むよう促す。
未咲は頷き、胸の内に渦巻く不安を笑顔で隠した。
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