サンタクロースは託す。

夕日ゆうや

老いたサンタと若者サンタ

 りんりんと鳴る鈴の音。

 雪が降りすさぶ大地。

 一面銀世界。

 枯れ木や街頭の上に積もる雪。

 目の前にはトナカイが二匹。その後ろにソリが一台。

「ふぉふぉふぉ。今年もやってきたのう。クリスマス」

「ええ。ですが、サンタさん、あなたはそろそろ引退の時期だ」

 齢89。確かにやめ時なのかもしれない。

「じゃあ、お主が後を継ぐのかい?」

「それは……」

 口ごもるサンタジュニア。

「そろそろ、わしを楽にさせておくれ」

「それは、そうですが……」

「ふぉふぉふぉ。大丈夫じゃ。お主には見込みがある。これまでの修行の成果を見せてやれ」

 わしは伸びた白いひげを撫でる。

「分かりました。私に任せてください。サンタクロースさん」

「ちなみにわしは日本専門のサンタ。お主は今日から日本専門のサンタになるんじゃ。いいかい?」

「……分かりました」

 逡巡したあと、深々と頷くジュニア。

「まずは魔法で子どもたちの願いを聞き届けよう」

 わしが魔法の杖を振りかざすと、全国に住む人々から願いのこもったオーナメントが届く。それに刻まれた文字が浮かび上がり、やがてプレゼントになる。

「魔法をここまで、この精度で……!」

 驚くジュニア。

「ほれ。お主もやらんかい。時間がないぞ」

「は、はい」

 若者であるジュニアも真似て魔法を振るう。

「ありゃ。包装が合わない」

「そういったときは自分で包まなきゃいかんのう」

 サンタは今もなお、全国の子どものプレゼントを包装している。それも魔法で。

「さすがサンタクロース」

 ジュニアは驚いたような顔をしているが、わしにとってこのくらいはどうとうことはない。

 むしろソリに乗ると腰に響くのが問題だ。

「どうやって包装されているのか、それを具体的にイメージせい」

「なるほど。魔法は想像力。それをイメージできるから綺麗に包装できるのですね」


 プレゼントを包装し終えると、いよいよ出発準備が整う。

 全国にいる子どもたちの寝床に置いていくため。

「いよいよじゃな」

「はい。サンタさんはこないのですか?」

「何を言っておる。今年からサンタはお前じゃ、わしは第三百二十代サンタじゃ」

「そうですか。分かりました。配達いってまいります」

 そう言って新しいサンタを見送ると、わしは一人小さな家にこもる。

 今年はとくに冷え込む。

 わしの魔法も、そろそろ解けかけている。長寿の魔法。

 それももうじき終わる。

 だが心配ごとはない。

 託すに足りる子を見つけたのだ。彼なら新しい時代にも負けることなく、子どもたちを笑顔にするだろう。

 これから始まる新しい時代、新しい子どもたち、新しい文化。

 すべてを祝福し、みなを笑顔にする。

 それがサンタクロースの役目、力。

 力を与えられた者にしかできない義務。

「さあ、若者よ、大志を抱け」

 そう言ってわしは眠りにつく。

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サンタクロースは託す。 夕日ゆうや @PT03wing

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