第29話

「とりあえずそこに座ってよ」

 

 僕は女子二人に僕のベッドへと座るように促す。


「……温かいコーヒーを淹れるね」

 

 あえてマイペースに、のんきに僕は行動する。


「そんなことをしている場合じゃ……!」


「急ぎすぎても良いことはないよ」

 

 僕は焦っているシーネを諭すように口を開く。


「大丈夫。……まだ、時間はあるから。まずすべきことは君が落ち着いて、英気を養うことだよ」

 

 淹れたコーヒーを三人へと手渡し、僕は椅子の上に座る。


「……ふー」

 

 そしてコーヒーを一口飲み、ほっと一息をつく。

 ベッドの上でシーネも同じようにコーヒーを飲んでほっと一息ついている。


「どう?美味しい?」


「……うん。美味しい」


 僕の言葉にシーネは頷く。


「じゃあ次は怪我を治すよ」

 

 シーネへと回復魔法を向け、傷だらけのシーネの体を癒やす。


「……よし。これで良し。どこか痛いところ、傷が残っているところはある?」


「ないわ……その、ありがとう」


「気にしなくていいよ。友達として当然のことをしたまでだよ。……次はその服だよ。速く着替えてきな」

 

 僕はシーネに向かって笑顔で告げる。


「わかった……」

 

 それに対してシーネが頷く。


「マリア。一緒に行ってあげて」


「わかったわ」

 

 シーネとマリアが部屋から出ていく。


「ふー」

 

 僕はコーヒーを飲んでほっと一息つく。

 ……面倒事は嫌なんだよなぁ。

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