第30話

「……何があったんだろうか?」


 シーネが居なくなった後、ルトがボソリと呟く。


「面倒事だよ……」

 

 それに対して僕は吐き捨てるように告げる。

 ここからはゲームでやっていない。未知の世界だ。

 だけど、ここまで色々と暗躍して情報を集めてきている。何が起こっているのか、それくらいは理解しているつもりである。

 この世界で一番大きな情報網を持っているのは僕なのだ。


「お前は何が起きているのかわかっているのか?」


「まぁーね」

 

 僕はさっきまでシーネが座っていたベッドの方へとダイブする。


「そこそこわかっていると思うよ……少なくとも普通の人間よりは遥かに理解しているよ。一応僕は天才と呼ばれる側の人間ではあるからね」


「流石だな、君は……まるで君の背中が見えない……」


 それに対してルトが深々と言葉を告げる。


「見る必要はないよ。君は勇者だ。実力では越えてくれないと困るけど……ほかは超える必要はないよ。情報を集めて君に伝えるのが僕のような裏方の人間の仕事だ」


「……そうだな。……俺は勇者なんだ。頑張らないとな。それで?結局シーネの周りで起きた厄介事とは何なんだ?」


「それは後で本人に聞いてよ。……もう来たからね」

 

 僕はちょうど開かれた玄関の扉の方へと視線を向けた。

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