第28話

「た、助けて欲しい?」

 

 いきなりの言葉にルトは混乱した様子を見せる。

 それはマリアも同様だ。


「それに、その怪我は一体どうしたんだ!?」

 

 次にルトが視線を向けたのはシーネの体の怪我。

 シーネの身を隠している服、皇女に相応しい立派なドレスであったと思われる服はボロボロで汚れていて、その影も見せない。

 至るところから血を流しているし、そのきれいな肌も土で汚れてしまっている。


「……そんなことは、そんなことはどうでもいいの……!今!今!帝国が……!私の祖国が……!家族が……!」

 

 悲痛な声を上げるシーネ。

 それに対してルトもマリアもどうしていいかわからず右往左往している。

 いきなりのこと過ぎてパニックになっているのだろう。

 二人共。


「祖国?家族?……アルメシア帝国の皇帝家で何かあったというの?」


「ねぇ」

 

 僕は混乱の極地にいる三人へと声を掛ける。


「まずは部屋に入ろっか……こんな外でする話じゃないよね?」 

 

 僕は三人に笑顔を見せ、僕とルトが泊まっている部屋の扉を開ける。


「ひとまずここの部屋に入ってから話を聞こうか」


「あ、あぁ……そうだな」

 

 僕の言葉に三人が頷き、みんなで部屋の中へと入っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る