第23話
「これが我が国の誇るレッカパンだ」
僕たちの前に置かれているのはフランスパンのようなパンに塊サイズのとろけるチーズが載せられたパン。
「美味しそうだね」
そのパンを見て僕は言葉を告げる。
「そうだな」
「私はすでに食べたわ」
「……」
「……その、すまない……」
「いいわ……もう気にしていないもの」
僕の横ではあいも変わらすルトとマリアの二人がこんな話をしている。
……マリアってば絶対にまだ気にしているよね?ものすごく根に持っているよね?
「当然だ!帝国が誇る名産だからな!我が帝国で作られた最高品質のパンとチーズだ。不味いわけがない!」
「そうだね……じゃあ、いただきます」
僕はレッカパンを口に含み、噛みちぎる。
チーズがとろんと伸び、糸を引く。
「どうだろうか……?」
「うん。とっても美味しい!いいね、これ」
僕は笑顔で答える。
「そうだろう!そうだろう!」
「うっわ。美味しい……俺が食べてきたパンの中で一番美味しいかもしれん」
「この濃厚なチーズがたまらないのよね……」
「うん!うん!」
ルトとマリアの感想にラミレイアが満足気に頷く。
ふむ。
やっぱり味がしないな。
ぐちゃぐちゃになった僕の味覚では味などとてもじゃないが認識出来なかった。無味無臭。
食べている感じは一切しない。
まぁ、そうだろう。
最初から予測していた。
今更パン程度で僕に刺激を与えることなど出来やしないだろう。
「このパンだけじゃ物足りないな……何かこれらに合ういい感じの食べ物ない?」
「そりゃもちろんビールとソーセージよ!」
「じゃあ……それを頼もうかな」
「うむ!それでは私も同じものだな!」
「「えー」」
僕たちの昼食が進んでいく。
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