第15話

 勇者であるルト対クラスで二番目に強いらしい男の子、ガク。

 二人が闘技場で見合う。


「ふー」

 

 勇者であるルトは聖剣を。

 

「はぁー」

 

 ガクは二振りの名剣を。

  

「よし」

 

 互いに武器を構えて。

 

「それでは、模擬戦。はじめ!」

 

 先生の一言がこの場に響く。


「雷精よ。我に力を『ダブルアクセル』」

 

 その瞬間にルトが魔法を発動し、地面を駆け抜ける。


「『水明陣』」

 

 そして、ルトの聖剣がガクへと振り下ろされる。


「明鏡止水」

 

 ルトの聖剣はガクの双剣によっていとも容易く受け流される。

 あっさりとルトの攻撃を受け流したガクの足元にはきれいな魔法陣が描かれている。

 ……水明陣。初めて見る魔法だな。この帝国の武門の魔法だろう。


「シッ!」

 

 受け流されたと同時にルトはすぐさま態勢を変え、足蹴りを繰り出す。


「凪」

 

 ルトの足蹴りの衝撃は何処かへと受け流されてしまう。


「霧雨」 

 

 そして霧のような雨がガクを中心に吹き出し、その小さな雨粒はルトの体へとまとわりついている。

 ルトはわずかに動きを阻害するその雨粒のせいで自分のペースを崩す。


「夕立」

 

 その瞬間をガクは決して見逃さない。圧倒的とも言える素早い双剣の連撃をルトへとお見舞いする。

 

 キンッ


 だが、その連撃は勇者の身に纏っている結界術によって容易く防がれる。


「ッ!?」

 

 勇者はどんなものにでさえ高い才能を持っている。近接戦闘にも、どんな魔法にも。

 ルトのガンクス(ガンジスではない)に匹敵するほど強固な結界はガクの攻撃を容易く弾いた。


「……ッ!送り梅雨!」


「待ってた」 

 

 慌ててガクはルトの結界を防ぐために強烈な一撃を叩き込む。

 その一撃はルトの結界を破壊した。

 

「『破魔』」

 

 ルトはガクの下に展開されている魔法陣を踏みつけ、破壊する。

 

「……は?」

 

 ルトは相手の魔法を無効化する高位の魔法の発動したのだ。

 

「ほいと」

 

「ふぐっ」


 水明陣はガクの生命線である。

 それを早々に見抜いたルトは最初からそれを壊すことだけを考えて行動していたのだ。

 自分の反応速度や身体能力を向上させてくれる水明陣を破壊されたガクはルトの腹パンを喰らって倒れた。


「勝者!ルト!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る