第9話
「……もう少し外に出てくれても良いんじゃないかしら?私、ずっと一人だったのだけど……」
アルメシア帝国が誇る帝都。
そこの高級店で料理をつついているマリアが不満げな言葉を告げる。
「何故かはわからないけどシーネは戻ってこないし……二人は外に出てこないし……ずっと一人ぼっち。一人ぼっちで帝都を観光して、一人ぼっちで買い物をして。……一人ぼっちでね」
マリアはぶつぶつと不満げに言葉を漏らし続ける。
「す、すまなかった……まさかシーネが居ないとは……」
そんなマリアに対してルトが一生懸命励ましていた。
「美味しい」
僕はそんな二人を横目に料理に舌鼓を打っていた。
料理の味なんてよくわからないけど。
そこら辺の虫や草、人間の死体も食べれるし、高級店の料理も食べれる。
どちらも同じである。
僕は二人に関わらないから、二人で話し合っていてほしい。
マリアはルトのことを少しでもいいから見てあげてほしい。謎に僕に関わってくるんではなくて。
「なぁに?シーネが居なかったら私なんて放置でいいの?私に会えなくていいの?二人共……私は会いたかったよ?」
「あぁ……いや、俺も、会いたかった……と、いうか……その、別に忘れてた、とか。放置していた……と言うわけでは、ない……のだけど」
「もぐもぐ」
しどろもどろになるルトともぐもぐ口を動かす僕。
「……」
そんな様子をマリアはジト目で見つめていた。
「えいや」
「あぶっ!?」
僕は自分の口の中に料理と共に入れていたフォークをマリアにいじられて、むせる。
「な、何をするの!?」
口に含んでいた料理を飲み込んだ僕は不満げな言葉を上げる。
「だって!私のことを無視するんだもん!」
「いや、ルトが居るじゃん?」
「私はアウゼスくんが良いんだけど」
「……」
見て?マリア。
ルトの顔を。絶望に染まりきった表情を。
そして、僕の方に向けられる複雑な感情の瞳を。
ルトが僕に向けてくる瞳の色が嫉妬、羨望、怒り。そんなものと同時に向けられる憧れ、友愛、尊敬の色を持った瞳。
それらが混ざりあうルトの瞳は虚無だ。
マリアはもう少しルトにも配慮をしてあげてほしい。うん。何か事情が有るのかもしれないけどさ。
「もう良いわ。過ぎたことだしね」
マリアは口の中に料理を運び、口を動かして……飲み込む。
「でも、その代わりに学校ではちゃんと私に構ってよ?一人にはしないでね?知らないところで一人ぼっちってかなり心に来るんだから」
「うん」
「もちろんだよ」
マリアの言葉に僕とルトは頷いた。
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