第7話

「ふぅー」

 

 僕は使用人から案内された宿のベッドに寝っ転がる。

 帝城からは無事に、特に苦労もすることなく出てきた。

 ……なんか、蟻一匹通さない!的なことを公言しているけど、吸血鬼なら侵入出来てしまいそうだ。ノーブルヴァンパイアともなれば鼻歌混じりに侵入出来るだろう。エルダーヴァンパイアだって苦戦はするだろうけど、問題なく侵入出来るだろう。


「……なぁ」


「んー?」

 

 僕は話しかけてきたルトの方を向く。

 案内された宿の一室は二人用。

 僕とルトと一部屋。マリアとシーネで一部屋ということで決まっている。

 

「さっきまでどこに行っていたんだ?」


「秘密ー。僕にも色々あるんだよー」

 

 僕はルトの言葉にそう返す。


「そ、そうか……」

 

 ルトは僕の言葉に頷く。

 ……。

 ……………。

 その後にこの場を支配するのは重苦しい沈黙だった。地獄のような雰囲気が流れる。


「……今」


 長い沈黙を破るようにポツリと言葉を漏らす。


「ん?」


「今にして思えば、二人っきりになるのは地味に初めてじゃないか?入学当初からずっと一緒にいるけど」


「あー。確かにそうかもね」

 

 僕はルトの言葉に頷く。

 いつも、僕とルトが一緒にいるときはかならず聖女の誰かがいた。二人っきりという状態は今が初めてだろう。

 基本的にルトは僕のことを避けているし、それに対して僕もわざわざルトとそんなに仲良くなる必要もなかったので、そんなに積極的に関わりに行こうとはしなかった。

 

「二人っきりが嫌なら別に僕は他のところに行くよ?」


「いや!そんなことは決して無い!嫌だなんてことは!」

 

 僕の言葉をルトは強く否定する。


「……ただ、新鮮だと思っただけだ」


「ふふふ。そう?なら良かった」

 

 ……ルト。君はそんなコミュ障の陰キャみたいな子じゃなかったよね?


「これからよろしく頼むよ。ルームメイトなわけだからね」


「うん。もちろん」

 

 僕はルトの言葉に頷いた。

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