第3話

「ふふん。久しぶりね!アウゼスくん忙しくてあんまり私と絡んでくれないんだもん」

 

 僕を膝の上に乗せてご満悦の火の聖女、マリア。


「……」

 

 それを無表情で眺め続ける勇者、ルト。


「何この地獄」

 

 そんな状況を眺めながらポツリと呟く雷の聖女、シーネ。

 

「……ふむ」

 

 僕はマリアお姉ちゃんの膝の上に乗りながら天を眺める。

 やっぱり来るべきじゃなかったかもしれない。僕は。

 ガンジスに任せるべきだった説ある。よゆーで。

 はー。どうしよう。今、猛烈に帰りたいんだけど。

 

 僕らはアルメシア帝国へと向かう馬車の中にいた。


「……乗り物酔い大丈夫?」

 

 一番最初に僕が人間状態で馬車に乗った時、依頼で馬車に乗った時、僕が乗り物酔いし、全力で胃の中のものを吐き出し続けていたことを思い出したマリアお姉ちゃんが僕に尋ねてくる。


「あぁ、うん。大丈夫。対策済みだから」

 

 僕はマリアお姉ちゃんの言葉に笑顔で答える。

 次に馬車に乗らなくてはいけなかったドワーフ王国への遠征時に、乗り物酔い対策の魔道具をギリアに作ってもらっている。

 それのおかげで僕は乗り物酔いをしなくて済んでいるのだ。


「それなら良かったわ!もう苦しんでいるアウゼス君をみたくはないからね!」


「あぁ、うん。ありがと」


「……」


「……」

 

 無表情で、何の感情も浮かんでいない瞳でこちらを呆然と見つめてきているルトが怖い。

 ただひたすらに怖い。

 恐怖でしかない。……あいつ、何?


「それでね─────」

 

 そして、マリアお姉ちゃんはそんなルトに気づくこともなく、延々と僕に向かって喋り続ける。

 マリアお姉ちゃんの過去には一体何があったんってばよ。怖すぎて何も聞けないッピ。

 ……冗談抜きに一度、聖女の面々の過去に何があったのか、調べるべきなのかもしれない。

 知りませんでした。

 というわけにはいかないからな。……聖女の面々について根掘り葉掘り調べるのは許されるかな?

 許してくれると良いんだけど。


「ねぇ、ちゃんと話聞いている?」

 

 僕がそんなことを考えていると、マリアお姉ちゃんが疑いの言葉を向けてくる。

 

「うん。聞いているよ。つい最近出来た筋肉プロティンカフェについての話でしょ?」


「うん!そう。それでね!」

 

 僕はマリアお姉ちゃんの話を聞きながら、アルメシア帝国に着くのを待った。

 ルトはずっとこちらを見ていた。

 シーネは関わりたくないと言わんばかりに馬車の外から窓を眺め、こちらに視線の一つも移してこなかった……。

 助けて?シーネ。お願いだから。

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