雷の聖女

プロローグ

 雷が僕たちの近くに落ち、轟音を鳴らす。


「そう。それなら良かったわ」

 

 僕の言葉にミネルバは安堵したような声を漏らす。


「……私もね。色々あったよ……あれから」


 ……あぁ。そうだろう。

 あまりにも色々なことが起きすぎている。あの頃から。

 

 から。


 ミネルバの周りも大きく変わっただろう。


「……君は、さ。死にたいって思ったことある?」


「ふふふ。あるよ。たくさん。ミネルバもそうでしょ?」


「あぁ。そうだね。……そうだとも。私にはあまりにも重すぎる」


「でもやるしかない。やるしかないんだよ」


 僕は笑みを浮かべる。


「僕はね。死にたいってずっと思っている。僕はね。殺したいってずっと思っている。僕はね。滅ぼしたいってずっと思っている。僕はね……僕を殺してくれる人をずっと探していた」


 笑みを浮かべたのはいつぶりだろうか。


「でも、もう無理だ。君もそのはずだ」


「えぇ。そうね」

 

 僕の言葉にミネルバも頷く。


「ふふふ。人形らしくともに踊ろう?」


「えぇ。そうね」

 

 僕とミネルバは共に笑いあった。

 ……喜びの感情などとうに忘れたが。

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