エイプリルフール 特別SS
日が傾き、空が橙色に染まった頃。
「おーい!アウゼス!!!」
波の音が遠くから聞こえてくるような港町で……アウゼスの名を呼ぶ大きな男の声が響く。
「はい!何でしょう!」
その声に対して小さな……小さな男の子、アウゼスが反応する。
アウゼスの表情には笑顔が浮かんでいる。
「明日も漁行くからなー!!!来いよー!!!」
「もちろんですよ!!!
アウゼスは元気よく頷き、お魚を握っている右手を振った。
その後もアウゼスは街の人に話しかけられ、それに対して笑顔で対応していく。
「いやぁー。最初の、全然話せなかったアウゼスとは思えないくらい滑らかに話すなぁ!がっはっはっは!」
「もう!あのときのことは言わないでよ!!!」
アウゼスは街の人と軽く言葉を投げあいながら、歩く。
そしてアウゼスは少し街から離れたところに建っている一軒の小屋にたどり着いた。
「ただいまです」
アウゼスは小屋の扉を開き、中に入る。
小屋はあまり広くはなく、きれいでもない。
中にあるのはキッチンと小さなちゃぶ台。それと部屋の隅にきれいに畳まれている服。
それだけ。ベッドや布団とかも置かれていない。
ものすごく簡素だと言えるだろう。
「ご飯ーご飯ーご飯ー」
アウゼスはキッチンに持っている魚を置き、異空間収納から包丁を取り出す。
そして、アウゼスは包丁を魚に向かって振り下ろした。
「んー。あの名もなき吸血鬼くんには感謝です。……こうして僕が平和で、楽しいひとときを過ごせているのですから」
慣れた手付きで魚をさばきながらアウゼスは呟く。
「僕がここに来てからもう半年ですか……ふふふ。幸せです」
アウゼス。
ゾンビとして、勇者たちに倒されたはずのアウゼスは、とある平和な国の港町に移住し、幸せな生活を送っていた。
そんな彼はもう二度とこの港町から、港町がある和の国から離れることはないだろう。
そして、吸血鬼たちアンデッドも二度と和の国に干渉してくることはない。
既にノーブルへと至っているアウゼスの逆鱗に触れたいとは吸血鬼であっても思わない。
和の国の平和は約束されているのだ。
あとがき。
ゲーム世界のアウゼス君が歩むルートの一つです。
他にもゲーム世界のアウゼスくんはが歩むルートがあります。今回はその一つですね。
一章で出てきた吸血鬼と、自分たちの計画の邪魔をしない代わりに安住の地を渡してもらうという密約を交わしていたアウゼスくんの話です。
アウゼスくんがゾンビとして主人公たちと戦って『殺されたように見せた』のはこの密約のせいです。
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