第47話

 しばらく待っていると、ドワーフ王国が吸血鬼の襲撃を受けたという知らせを受けて集まってきた他国の人間が増えてくる。


「それでは私はここらで失礼させてもらうとしよう」

 

 僕はそこらへんの対応に追われているとドワーフ王にそう告げる。


「うむ。わかった」

 

 ドワーフ王は僕の言葉に頷く。

 それを聞いて僕はこの場から去った。


 ■■■■■

 

「やぁ」

 

 僕はキョロキョロと辺りを見渡していたギリアと罅隙に話しかける。


「……ッ!!!」


「アウゼスくんッ!!!」

 

 ギリアと罅隙は僕を見つけて、顔を驚愕させ瞳に涙すら浮かべている。


「あぶっ」


「あぁぁぁぁぁぁああああああああああ!良かったッ!良かったよォ!!!」

 

 罅隙は僕に抱きつき、涙を流している。


「あ、あれ?ドワーフ王に無事だって教えてもらわなかった?」


「いや、忙しかったらしくてな」

 

 ギリアが遠くで多くの人に囲まれているドワーフ王を指差す。


「……あぁ。なるほどね」

 

 僕は頷き、納得した。……確かにあれだったら対応できないだろう。少しくらいは対応しろって思うけどね。一応僕は一人でヴァンパイア三人を相手取り、時間を稼いだ子なんだけど?


「大丈夫。僕は大丈夫だから。安心して。怪我もないよ」


「それなら良かったよ。それで、どこに行ってんだ?」


「あぁ、それはおいおい話すよ。……今、話すべきなのはこれからじゃないかな?どうする?ギリア」


「ん?何がだ」


「帰るか、残るかだ。元々僕たちの目的は『分霊』を習得すること。それが出来た今、僕たちはどうする?って話。僕個人で言うのならば、いや、僕は帰る。ギリアはどうする?ドワーフ王国がこんな状況だけど」

 

 あまりここに長居するわけにもいかない。ガンジスを王都に貼りつかせている現状は人類にとってあまり良いことではない。

 ガンジス一人で戦況はかなり変わるからね。今でもアンデッドと人類は地獄の戦いを繰り広げている。


「ここに残り続けるのも問題だからな。パルちゃん親子が心配だから」


「……っ」

 

 僕の言葉にギリアは言葉を詰まらせる。だが、すぐに表情を切り替える。


「あたいも帰るよ。ここで残るよりも……アンデッドたちと戦う方がドワーフたちのためになる」

 

 ギリアは強い言葉で告げる。

 その瞳には良い覚悟は宿っている。ここで一番得られたのは、ギリアの覚悟と強い意志だろう。

 アンデッドを滅ぼす、という。……いつかは。


「じゃあ決まりだね。罅隙もそれでいいね?」


「ばい!」

 

 罅隙は涙声のまま頷いた。

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