エピローグ

 僕たちは今、ドワーフ王国からファースト王国に向かう馬車に揺られていた。

 

「あぁぁぁぁぁ。馬車揺れるぅ」


 僕は二日酔いで痛む頭を抑えながら馬車に揺られる。

 ……昨日、地上で無事だったお酒をガブガブとドン引くするくらい飲んだせいで、流石に二日酔いが残った。


「ごぉー、ごぉー、ごぉー」


 ギリアは今も現在進行系で酔いつぶれ、大きないびきをたてて眠っている。

 

「大丈夫ですか?」


「うん。大丈夫だよ」

 

 僕は心配そうな罅隙の言葉に笑顔で答える。


「そうですか。それは良かったです。……あ」


「ん?」


「そういえば、あの後どうなったんですか?吸血鬼が三人いたはずですけど……」


「あぁ。そこらへんの話は聞いていないんだったよね。えぇと、異端審問官の人が助けてくれたんだよ」


「異端審問官ッ!?あ、あの……?」


「うん。そうだね」

 

 僕は罅隙の驚愕の言葉に頷く。


「……確か、人類最強戦力、でしたよね?異端審問官の方々は」


「うん。そうだね」

 

 異端審問官は、終焉騎士よりも強い勢力と言えるだろう。

 まぁ、ガンジス一人で終焉騎士滅ぼせるからね。


「どうでしたか?強さのほどは……」


「化け物だね」

 

 僕は罅隙の一言に断言する。


「あれは間違いなく化け物。理解し難い怪物だよ……。なんであんな存在がこの世界にいるのか、僕には理解できないね」


「そ、そんなにですか?」


「うん。僕が苦戦したヴァンパイア三人を瞬殺。一分もかけずに倒したからね。化け物でしかないよ」


「え!?ヴァンパイア三人を瞬殺ですか!?」


「うん。エゲツないよね……その後もエルダーヴァンパイアを終始圧倒していたからね……」


「し、信じられません……」


 罅隙が驚愕の表情を浮かべる。


「わ、私は全然まだまだなんですね……」


「うん。僕もそうだよ。まだまだ全然。……あの人の足元にも及ばない……」


「もっと頑張らないとですね!」


「うん。そうだね……もっと、頑張らないと」

 

 僕は罅隙の言葉に頷く。

 このまま頑張って罅隙には大きく成長してもらいたい。

 大きく、しっかり、人類の戦力の一つとして。


「ふー」

 

 僕はきれいな青空を眺める。

 空は青く雄大で、変わらない。

 ……ギリアも、罅隙も。他にもたくさん。みんな成長している。

 僕は間違えて、いないよね?

 先の見えない不安。僕は不安を抱えながら馬車に揺られていた。

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