第41話

「なっ……!?馬鹿な……!」

 

 吸血鬼が倒された。

 その事実に対してもう一人の吸血鬼が驚愕する。


「なっ……なっ……なっ……何をしているんだ!?下等種族に負けるなど!?」 

 

 ドワーフたちをなぎ倒し、ドワーフ王相手に一方的に攻撃していた吸血鬼は怒りを顕にする。


「ふんっ!」

 

 そして息も絶え絶えのドワーフ王から攻撃対象を罅隙とギリアの二人に移し、二人の方に突撃する。


「死ね!『創造血装』」

 

 巨大な血の剣を作り出した吸血鬼は一瞬で二人との距離を詰める。

 腹を貫かれた罅隙はすでに動けず、ギリアもさっきの『分霊』慣れないスキルの行使に疲労している状態でまともに戦闘出来るような状態ではない。


「……くっ」

 

 それでもギリアは前を向き、ハンマーを持ち上げる。


「死ねッ!」


 弱々しく震えるギリアに向かって吸血鬼は巨大な血の剣を振り下ろす────!


「お前がな?」

 

 ギリアを巨大な血の剣が斬り裂くよりも少し前。

 

「……ァ?」

 

 吸血鬼の心臓をハルバードが貫く。


「『分霊』」

 

 吸血鬼の体が崩れて、灰になっていく。


「いやぁー。助かったぜ」 

 

「はっ」

 

 ドワーフ王は力が抜け、崩れ落ちたギリアに向かって労いの言葉をかける。


「お前らがいなかったら、俺は力を温存することが出来なかった」

 

 吸血鬼の一人を二人が倒し、そして吸血鬼の注意を引き連れてくれたからこそドワーフ王が一撃で、大した消耗もなく倒すことが出来た。


「おい!応急手当が出来ない奴は今すぐに救護班を呼んでこい!応急手当が出来る人間は応急手当を急げ!少しでも、一人でも多くの同胞を救うんだ!」

 

 ドワーフ王は言葉を張り上げる。

 それを聞いてドワーフの騎士団たちは慌ただしく動き始める。


「よし」

 

 ドワーフ王は頷き、一人壊れた扉の方に向かう。


「ど、何処に?」


「あ?」 

 

 ギリアの疑問を聞いて、ドワーフ王は足を止めて振り返る。


「決まっているだろ。上にいる三人の吸血鬼を倒すんだよ。……なぁに。任せろ。俺は偉大なるドワーフ王だ。吸血鬼の三人くらい容易く倒してきてやんよ」


「……ッ!ご武運を……」

 

 ハルバードを担いだドワーフ王はギリアに見送られ、地下一階から地上へと向かっていく。


「良し!行くか!」

 

 そしてドワーフ王は地上の方へと出た。


「……ッ!?こ、これは……!」

 

 地上へと出たドワーフ王。外に出たドワーフ王は目に飛び込んできた光景を見て絶句する。

 ほとんど何も残さずに吹き飛び、廃墟すら残っていないような街。

 そして、そんな街の中央に立っている一つの人影がドワーフ王の目に入った。

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