第38話

「はぁ……はぁ……はぁ……」


「クソッ……」


 蹂躙。鏖殺。虐殺。

 死屍累々。

 今の現状を現す言葉としてこれが最も相応しいだろう。

 地面に転がる幾つものドワーフたちの死体とボロボロのドワーフたち。

 それとは対象的に平然と空に君臨している二人の吸血鬼。

 

 彼らドワーフたちは努力した。

 必死にあがいた。その頑張りは認められるものがあるだろう。

 しかし、所詮認められるのは頑張りだけ。

 結果はついてきていなかった。

 吸血鬼たちに有効打となるような一撃を与えることは出来なかった。

 むしろ、吸血鬼たちに大量の『血』という武器を与えてしまったということを考えればむしろマイナスだったとさえ言えるだろう。


「諦めるなッ!!!!!」

 

 そんな絶望的な状況の中、ドワーフ王は叫ぶ。今だ落ちぬと。ドワーフは屈しないとその姿を持って見せる。


「おう……!」

 

 それに対してドワーフたちも答え、必死に戦う。


「あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!まだ頑張るのかッ!!!無駄な!無駄なことを!」

 

 吸血鬼は笑う。

 その無意味な抵抗に。

 

「くっ……」

 

 ドワーフ王は下唇を噛み、苦心する。

 吸血鬼の強さはドワーフ王の想像の遥か上を言っていた。強いとは聞いていた。だが、ここまで絶望的なものだとは思っていなかったのだ。

 まだドワーフ王は『分霊』のスキルを使っていない。

 やろうと思えば、もっとイケる。吸血鬼二人をまとめて相手して勝利出来る自信すらある。

 しかし、『分霊』は消耗の大きなスキルだ。ここで使ってしまえば、二人の吸血鬼を単独で倒すにはあまりも大きな力を使ってしまう。再び戦うことが、他の吸血鬼との戦いに、残りの三人の吸血鬼の相手ができなくなってしまうだろう。 

 だからこそ、ドワーフ王は『分霊』を使わずに必死に抵抗していた。

 

「……あたいが……!ちゃんと使えれば……!」

 

 ギリアが歯噛みする。

 『分霊』を、ギリアは未だにスキル『分霊』を発動できずにいた。


「そろそろ終わらせるか」

 

 吸血鬼が腕を振る。

 それだけで彼に操られている血が波となって襲いかかり多くのドワーフたちを倒す。


「……そうだな。とりあえずこいつをなんとかするか」

 

 吸血鬼の一人が罅隙へと目を向け、彼女のもとに降り立つ。

 罅隙の氷魔法は吸血鬼の動きを一時的に止めたりと、最も吸血鬼に対して干渉し、邪魔をしていたと言っても良かった。

 

「……ふっ」

 

 罅隙は異空間収納から特別な武器、装飾品を取り出す。


「へぇー」

 

 それを見て吸血鬼は興味深いようなものを見るような視線を向けた。

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