第36話

「ふー。これで全部か?」

 

 ドワーフ王が避難してきた人たちを見て、呟く。


「はい、多分。そうです」

 

 避難してきた最終尾にいたドワーフの男がドワーフ王の言葉に頷く。


「誘導してくれた男の子がそう言っていたぞ」


「そうだ!あいつは?あいつはどこだ!?」


 アウゼスを探してキョロキョロしていたギリアがドワーフの男に詰め寄る。


「え、えっと……戦っているドワーフの加勢をしてくると言って行きました」


「か、加勢に……」

 

 ギリアがそれを聞いて泣きそうな表情を浮かべる。

 吸血鬼の恐ろしさは底が知れず。ギリアはアウゼスがそんな吸血鬼と戦うと聞いて気が気じゃなかった。

 

「大丈夫だろう。……あいつは自分から死にいくような人間じゃねぇよ。心配すんな。それよりもこっちだ……避難民はこちらへ。騎士の奴らはどうしてる!?おせぇぞ!」


「地下三階の騎士は移動に時間がかかっているそうです」


「急がせろッ!吸血鬼の奴らがいつ来てもおかしくねぇ!」


「はい!」


 周りに集まっている騎士たちが慌ただしく動く。

 避難民の誘導と騎士たちの集結と武器の手入れだったり。


「すみません。遅れました」

 

 罅隙に率いられた地下三階に駐屯している騎士たちがドワーフ王のもとにやってくる。


「第三騎士団集結完了致しました!遅くなって申し訳ありません!」


「うむ!構わん!すぐにでも準備に取り掛かれ!」


「はっ!」

 

 騎士全員が陣形の確認などを始める。

 そんな時─────

 


 ダンッ!!!!!



 大きな音が鳴り響く。

 その瞬間。

 避難民たちがざわめき始め、恐怖が伝播する。

 地上から地下一階へと入るための大きな扉に凹みが入る。




 ダンッ!!!!!




 大きな音が響き渡り、凹みが大きくなる。


「お前ら!構えろ!来るぞ!」


「……ッ」

 

 全員に警戒が広がる。

 

 

 

 

 ダンッ!!!!!

 

 

  

 

 結局。

 あっさりと扉は吹き飛ばされる。

 吸血鬼の強さの前ではドワーフの鍛冶の結晶など無意味に等しかった。


「来た……ッ」

 

 姿を見せたのは二人の吸血鬼。

 

「あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」

 

 大きな笑い声が上がる。


「美味しそうなのが一杯いるじゃないか!」


「全員まとめてぶち殺して喰らってやるよ!」

 

 魔力が、力がこの場一体を支配し、恐怖が伝播する。

 そして、それと同時に高い闘争心も。

 彼らの四肢に力が宿り、吸血鬼を睨みつける。


「行くぞ、野郎ども」

 

 ドワーフ王がはっきりとそう告げ、自らの得物を強く握る。

 

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」


 ドワーフたちの歓声が上がった。

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