第35話
「シッ!」
「死ねッ!」
「ラァ!」
恐怖。
彼ら吸血鬼三人は自らの恐怖心を打ち破るかのように僕に突撃してくる。
「ふっ」
僕はそれに対して小さく微笑みかける。
彼らが持っているのは等しく剣だ。
吸血鬼たちの剣が僕に突き刺さり、貫く。
「はっ……?」
あっさりとしている貫かれた僕に吸血鬼たちは呆然としている。
……吸血鬼との戦闘経験はあまりないのだろうか。こいつらは。吸血鬼を相手に刺した程度でやったつもりでいるのはどうだろうか?
ただの剣じゃ死なないぞ?
これは楽勝だな。
「はっ」
僕は笑い声を上げる。
そして、そのまま自分の体を霧化させる。
「馬鹿がッ!」
「なんだよ!ビビる必要はなかったじゃないか!」
「逃げんなッ!」
三人の吸血鬼は霧化した僕を取り込んでいく。
……本来なら、本来ならば三分割して吸血鬼を取り込めばそれだけで自我が崩壊し、そのまま自分の力へと出来てしまうだろう。
「ふへ?」
しかし、すでに壊れた僕は三分割程度苦でもなんでもない。
「あひゃ」
そして、僕は三分割程度で簡単に取り込めるほど薄くはない。
「ひひひ」
普通、冥魂吸血をしている人間の意思は一つじゃない。分割程度で簡単に取り込めない。だからこそ、基本的に冥魂吸血をしている吸血鬼を取り込むなんてことは普通の吸血鬼ならしない。
だが、吸血鬼との戦闘経験が浅い。こいつらならばあっさりと吸ってくれると思った。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
「殺せ!殺せ!殺してくれぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええ!」
吸血鬼三人はあっさりと心を崩壊させる。
壊れた心に僕という存在を染み込ませ、侵食していく。
そして、完全に掌握する。彼らの人格は徹底的に破壊する。
「ふー」
体を霧化させ、一人の姿として戻る。
「ふー。これで終わりっと」
僕が呟き、首を回す。
ダンッ
そのタイミングで一人の男が僕の方へと堕ちてくる。
地面を砕き、大きな音を立てて。
「面白いやつがいるじゃねぇか」
姿を現したのは自信に満ち溢れている一人の男。
金髪金眼で筋肉質な高身長なイケメン、エルダーヴァンパイアの一柱が僕の方へと近づいてくる。
「お前があいつの言っていた野良のヴァンパイアか」
「そうだよ。よろしくね」
僕は笑顔を浮かべて告げた。
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