第33話

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああん!!!」


「お母さんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!」


「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!!」


 巻き起こる悲鳴の数々。

 ドワーフたちが営みを行っている街が、家が、破壊されていく。


 血が舞い、死者が踊る。

 

 多くの人たちが次々と殺され、悲鳴が上がる。


「クソッ!野郎共!戦え!」


「行け!行け!行くぞ!」

 

「クソ吸血鬼がぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」

 

 そんな中、ドワーフの戦士たちが吸血鬼たちへと果敢に戦いを挑んでいる。

 今回侵入してきた吸血鬼の数はあまり多くない。

 ヴァンパイアが5体とエルダーヴァンパイアが1体。

 エルダーヴァンパイアは一人余裕を決め込み、王城へと単身乗り込んでいるのをこの目で見た。

 そして、そこにいる人間を皆殺しにして持参してきたと思われる高級ワインを片手に玉座でゆったりと座っているところを魔法で確認する。

 

 エルダーヴァンパイアは後で僕が倒すし、さしあたっての脅威ではない。となると、残りはヴァンパイア五体。

 ……いや、まぁ普通に絶望的だな。

 

「ドワーフ王!早くあたいらも加勢しないと!」


「そうです!」


「……いや、駄目だ」

 

 ドワーフ王はギリアと罅隙の言葉を否定する。


「俺らが今やるべきは避難民の誘導だ。ここはもうだめだ。地下へと避難し、騎士を総動員させる」

 

 ドワーフ王国は横にではなく縦に伸びている。

 地上、地下一階、地下二階、地下三階と。縦に領土を持っているのだ。

 地下に領土を作る。それはものづくりに長け、大地に愛された民族であるドワーフだからこそ出来たことだ。

 ドワーフ騎士団の精鋭は地下の方にいる。地上には居ない。

 そのため、今やるべきことは避難民を一人でも多く地下へと運び、精鋭であるドワーフ王並びにギリアたちも無事に地下へと退避することだろう。


「なっ!?」


「そうするのが一番だね」

 

 僕は驚くギリアを差し置いて言葉を告げる。


「ここを……捨てる」


 ギリアが呆然と呟く。


「でもドワーフ王。あなたは一つ間違えている」


「あ?」


「あなたは一番最初に退却する」

 

 僕は呆然としているギリアを気絶させ、そのまま罅隙も気絶させてしまう。


「あなたは二人を抱えていの一番に逃げて。あなたが希望。避難民の誘導は僕がする」


 ドワーフ王は僕の瞳をじっと見つめる。


「……わかった!……任せたぞ」

 

 そして、ドワーフ王は二人を抱えて背を向けた。


 さて、と。

 仕事と行きますかぁ。

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