第32話

 のどかな平和の日々。

 そんなものは続くかない。

 

 ゲームではガンジスの護衛の元、勇者たち聖女の面々はドワーフの国へと向かった。

 その間に悪魔崇拝者は、悪魔崇拝者の依頼を受けた吸血鬼は学園を襲った。 

 国を燃やした。

 勇者や聖女たちの成長を阻害し、苦しめるために。


 しかし、ゲームと今は違う。

 今、ガンジスは王都にいて勇者や聖女たちを守っている。

 

 そして、ドワーフ王国にはギリアだけが来ている。

 何が起こる。そんなもの。火を見るよりも明らかだった。 

 それは、僕たちがまだギリアの『分霊』スキルの訓練の途中をしているときだった。


 

 

 ダンッ!!!!!!!!!

 

 


 大きすぎる音が響き渡る。  


「なっ!?何だ?何の音だ!?」

 

「何処だ!?」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」


「うおっ!?」


「……何が起きていやがる?……胸騒ぎが……」

 

 それに合わせてドワーフたちに混乱と困惑、恐怖の色が広がっていく。

 


 

 ダンッ!!!!!!!!!!!!!!!




 再び起こる巨大な音。

 そして……その音は、ドワーフ王国を守る巨大な門を大きく凹ませていた。

 ヒビが入り、ドワーフの威信そのものが凹んでいる。

 

「あっ……あっ……あっ……」


「馬鹿なッ!?!?」


「あ、あり得ない!嘘だっ!?そんなこと!?」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!」


 驚愕と悲鳴。


「あり得ない!何がッ!何が起きている!?どこの攻撃だッ!?」

 

 僕の近くに居たドワーフ王が大きな声で叫び、動揺を顕にする。

 

「吸血鬼……」

 

 そんなドワーフ王にも聞こえるように僕は小さな声でつぶやく。


「きゅ、吸血鬼、だと?」


「あんなこと出来るのは吸血鬼くらいだよ」

 

 僕は立ち上がり、刀を取り出す。

 ドワーフ王に打ってもらった新しい刀だ。


「死。死が来たよ」

 

 僕の一言に、ドワーフ王もギリアも罅隙も息を飲む。

 恐れおののく。

 

 

 

 ダンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 

 

 


 吹き飛ばれる。

 宙を舞う。

 巨大な扉が。ドワーフ王国の威信が。

 

 大きすぎる金属の塊はドワーフ王国に落ち、多くの生命をただの肉の塊へと変える。


 何人もの吸血鬼がドワーフ王国へとやってきた。やってきてしまった。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 悲鳴が上がる。

 死が、起こる。

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