第30話

 お祝いムードのドワーフたち。

 そんな彼らの酒盛りは一晩経っても終わらず、DAY2にまで伸びていた。

 

「えぇー」


「すごいね……」

 

 宿屋に向かい、そこで一泊してゆっくりと眠って朝起きた時。

 未だにドンちゃん騒ぎしていたドワーフたちを見て僕たちはドン引きしたように呟いた。

 

「え?……僕たちもお酒でも飲む?」


「そ、そうしましょうか……」

 

 お店なんて酒屋以外にやっていない。

 ……なので酒屋に行く以外の選択肢がなかった。

 僕と罅隙はギリアがいる酒屋へと向かった。

 

 ■■■■■

 

「……お酒強すぎません?」


「ん?まぁね」

 

 ドン引きしたような罅隙の言葉に僕は頷いた。

 そんな僕の周りに酔いつぶれたドワーフたちが眠りについている。その中にはギリアの姿もある。

 

「でも、こいつらはずっと飲んでいたからね……その分もあるだろうけど」

 

 僕は苦笑を浮かべ、そう話した。

 さっきまで僕とドワーフたちで酒飲みで戦っていたのだ。

 僕も、ドワーフも互いに倒れることはなく、アルコール90%超えの最強のお酒である火竜の逆鱗という酒を飲みまくったのだ。

 地球で言うと、スピリタスか。

 スピリタス飲み比べとか正気の沙汰じゃない。

 まぁ、そんな戦いに僕は勝利したのだけど。


 僕はかなりお酒に強い。例え吸血鬼状態じゃなかったとしても。

 吸血鬼であればアルコールを摂取しても別になんともないのだけど、今はそういうわけにもいかない。

 確かに僕はお酒に強くはあるものの……完全に無効化出来るわけではない。

 僕は少し、酔っていた。

 酔っているせいで……少しだけ精神的に不安定だった。


「はぁー」

 

 僕は深々とため息を吐く。


「死にたい……」 

 

 ボソリとつぶやく。


「えぇ!?」 


 罅隙の大きな声が頭に響く。


「ど、どうしたんですか?いきなり……し、死にたい、だなんて……」


「大変なんだよ……僕も。はぁー。死にたい……」


 何で僕が、僕という存在が……。

 

「何か悩みがあるのなら、聞きますよ?」


「……ないよ。僕は……人類の守護者なのだから」

 

 僕は罅隙にそう告げる。

 それしか……あぁ。僕にはもう、それしかないのだから……。


「はぁー。感情など要らない。人類を守る剣。ただの剣だったら良かったのに」

 

 僕はお酒を胃の中へと流し込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る