第26話

「ふーん。わかってくれたのかな」


 空を見上げている罅隙を見て僕は告げる。

 このミノタウロスを倒すのに必要なものは上に、太陽にある。 

 太陽があった場所は巨大な瞳となって浮かんでいる。


「さて、と」

 

 僕は良い感じにピンチを演じることにしようか。


「ウォ!!!」


「くっ」

 

 ミノタウロスのハルバードが僕の右足をかする。

 右足からは血が流れ、ミノタウロスの剛腕に振るわれたことでバランスを崩し、地面と叩きつけられる。


「あぁ!?」


「アウゼス君ッ!!!」

 

「ウォ!!!」

 

 ミノタウロスは地面へと転がった僕を踏みつけるために足を動かし、地面を揺らす。


「……ッ!」

 

 僕は慌てて体を転がし、なんとかミノタウロス足踏みを回避し続ける。


「シッ!」

 

 ミノタウロスの足に向けて刀を突き刺し、反転。

 地面から離れ、刀の柄に立つ。


「ウォ!!!」

 

 振り払うためにミノタウロスは足を大きく上げて、思いっきり前へと蹴り上げる。

 それよりも前に僕は刀の柄を蹴り、宙へと退避した。


「ふー」

 

 少し離れたところに僕は立ち、異空間収納から一振りの刀を取り出す。

 その刀は少し、錆びていた。

 

「さて、と」

 

 僕は刀を構え、地面を蹴る。


「ウォ!!!」

 

 ミノタウロスは土を掻きあげ、僕に向かって土を飛ばしてくる。


「『円形結界』」

 

 簡易的な結界を構築し、土の直撃を防いだ。


「ほっと」

 

 お粗末な刀で僕はミノタウロスとの戦闘を続ける。

 僕の右足からは血が流れ続けている。


「もうそんな持たないかもしれない!ごめん!」

 

 僕は二人に向かってそう叫ぶ。

 鎖を持って唯一太陽の光が当たった向かっている二人に向かって。


「大丈夫だ!もうわかった……!後少しだけだ!」


「お願いします!」


「うん!少しくらいなら余裕だね!あと一時間は待てる!」


「そんなに待たせません!」


 ……ふふふ。

 どうやら二人はちゃんと地力で答えを見つけたみたい。

 重要なのは前を見て答えを探すこと。

 答えが至るところに存在している。天上にも、地上にも、ミノタウロスにも。

 たくさんある。答えは一つじゃない。

 幾つもある答えのうち、たった一つの答えを見つけるだけでいい。

 ただ、前を向く。上を向く。それだけで答えを見つけられる。

 二人は見つけられたようだ。


「後少しだけ踊ってもらうよ?」

 

 僕は自分の右足から流れる血を操作し、ボロボロの刀をコーティングする。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 大きな声で咆哮するミノタウロスへと、僕は刀を構えて駆け出した。

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