第21話

 僕は地面を蹴り、跳躍。

 闘技場で仁王立ちしているミノタウロスの方へと突っ込んでいく。


「うぉ!!!」


「しっ」

 

 ミノタウロスがその大きな体とマッチしていない圧倒的な速度でハルバードを振るう。

 僕はそれを避け、代わりに腕を数度斬り裂く。

 次に狙うは足。

 ミノタウロスの足元に降り立った僕は刀を回し、ミノタウロスの大きな足を捉える。

 

「ガァ!」


 ミノタウロスは只勢いよく足を振り上げる。

 それだけで、僕は上へとふっ飛ばされる。


「『サンダー』」

 

 上へと吹き飛ばされた僕。

 そんな僕の目の前に存在しているのはミノタウロスの顔。

 僕はミノタウロスの顔、両目に向かって雷魔法を発動させる。


「ォォォ、ふぅー」

 

 だが、僕のしょぼいサンダーごときじゃミノタウロスの両目を傷つけることは出来ない。

 ミノタウロスは低い唸り声をあげ、鼻息を吹き付ける。

 風魔法かと錯覚するほどの鼻息は僕を容易く吹き飛ばした。

 ふむ。やっぱり僕が軽すぎるな。

 上空を蹴り、再びミノタウロスの方へと突っ込んでいく。

 魔法という奇跡を起こす素となる魔力とは実に便利なものだ。大体のことは魔力で出来てしまう。

 魔力を纏わせた足ならば、空気だって蹴れてしまう。


「僕では物足りないだろうが……相手をしてもらうよ」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ミノタウロスは僕の言葉に答えるように咆哮する。


「しっ」

 

 ミノタウロスの両腕によって振り回される巨大なハルバード。あれ一つで致命傷レベルの威力を持っている。

 一発でも当たったらアウト。……一体どんなクソゲーだ。


「『ソムニウム』」

 

 闇魔法でミノタウロスに幾つもの幻術を見せ、翻弄させる。

 ワンサイドゲーム。

 ミノタウロスの攻撃は空振り続け、僕の攻撃だけがミノタウロスを傷つける。

 だがしかし。

 僕の軽い攻撃じゃミノタウロスの薄皮を斬り裂く程度が限度だった。


「ラァ!!!」

 

 ギリアの大きな声。


「ォ?」

 

 それとともにぐらつくミノタウロスの体。


「雷精よ、我が願いを叶え給え『雷鳴刺刀』」 

 

 ぐらつき、隙を晒したミノタウロスへと一気に距離をつめミノタウロスの眼球へと刀を突き刺した。


「ォォォォォォォォォォ!!!」

 

 ミノタウロスが苦悶の声を上げる。


「よっと」

 

 その後すぐに刀を抜き、後ずさった。


「ナイスー」

 

 そして、同じくミノタウロスからさっさと退却していたギリアにも声をかける。  

 ギリアがミノタウロスの足へと渾身の一撃をお見舞いし、体勢を崩したのだ。


「行きます!」


 遠くから罅隙の声も聞こえてきた。

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