第15話

 僕の朝食が済んだ後、みんなで壁が動いた結果出来た道を進んでいっていた。

 道はぼんやりと光っていて、光源はわからない。まぁ、魔法によって照らされているのだろう。

 石で出来た滑らかな道をゆっくりと進んでいく。


「俺が行けるのはここまでだ」


 突然。

 ドワーフ王が止まり、僕たちに向かってそう話した。


「ここから先は試練を望む者だけが進める地だ。一度試練をクリアした俺はもう二度とこれ以上先には進めない」

 

「ふーん」


「おう!もうか!」

 

「がんばります!」

 

 僕はふんすと意気込んでいる二人を尻目に、吸血鬼としての力を一部開放する。

 この先の道がどうなっているのかを調べるためだ。

 ……へー。実に興味深い。

 ここから先に……道はなかった。行き止まりだ。さっきまで見せていたのは魔法による幻だろう。……幻を作り出せる魔法は、闇魔法しかないので吸血鬼の関与を更に疑いたくなるものの、幻を見せるだけならスキルでも出来る。

 まだ……吸血鬼が関与していると確信出来るわけではない。残念ながら。

 

 この先。行き止まりの壁には幻を見せるのともう一つ。大きな魔法を発動させるための魔法陣が描かれていた。

 無属性魔法に分類される様々な魔法の中でもかなり高位となる空間魔法。

 その空間魔法でも魔法を得意とする吸血鬼や魔法のみを極めたアンデッドの頂点であるノーライフキングクラスでないと使えないほどの空間魔法。

 かなり大規模な魔法……だがしかし、僕の脅威ではない。

 わざわざこんな魔法にかかってあれこれするのは面倒だけど……まぁドワーフの魔法、楽しませてもらおうか。 


「じゃあ……行ってくるがよい!」


 ドワーフ王の大きな声が僕たちの背中を打つ。


「あぁ!」


「はい!」

 

 ギリアと罅隙が力強く頷く。 


「ん」


 それに対して僕は気楽な感じで返事を行う。

 まぁ、ドワーフだけの特別な試練と言っても大体のことはさっきの観察でわかってしまったし、あんまり力が入らない。


「……お前、ドワーフの試練を何だと?まぁこれが強者の余裕ってやつか?……互いに全力でやっても俺が負けるなんてことはないよな?」


 ドワーフ王が僕の気楽すぎる態度を見てそんなことをほざいている。


「このまま一歩踏み出せば良いんだよね?」


「あ、あぁ、そうだ」


「了解」

 

 僕たちは今立っている場所から一歩踏み出す。壁の方へと。

 足には硬い壁の感触を感じる代わりに全身を浮遊感が包み込み、僕の視界は光へと包まれる。

 そして──────


「殺せ」

 

 一つの、低くおどろおどろしい何処か聞き覚えのある声が聞こえてきた。

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