第13話
一週間。僕、ギリア、罅隙はドワーフ王国の観光を楽しんでいた。
「よし!今日だな!」
一週間が経ち、とうとう試練の日を迎えた朝。
ギリアはパンッと自分の頬を叩き、気合を入れていた。
「えぇ。そうですね」
罅隙もギリア同様に気合を入れていた。
「ふわぁ」
僕は寝ぼけ眼を擦りながら気合を入れている二人を眺める。
……朝。僕が最も機嫌が悪く、元気のない時間帯だ。単純に朝が弱いことにも加え、寝るとこれ以上ないまでに感じてしまう負の感情の海。
それに波打たれる僕の気分が良いはずがない。
「ほら!早くお前も立てよ!」
なので……つい反射的に僕の腕を掴んで強引に立たせようとしてきたギリアの腕を振り払った。
「触らないで」
「お、ごめん……お、怒っているか?」
それに対してギリアがなんとも言えない表情を浮かべて聞いてくる。
「朝、弱いの」
それに対して僕は出来るだけことを荒らげないように気をつけながら口を開いた。……僕の口からはぶっきらぼうな言葉しかもれないけど。
「あ、あぁ。そうだったな。すまない……気分が高まっていて……」
「別に気にする必要はない……朝起きるのが苦手な僕が悪いだけ。お水貰える?」
「はい」
僕は水が溜まっている桶を罅隙から受け取る。この桶に入っている水は罅隙が魔法で生み出したものだ。
「ぶくぶくぶく」
僕は桶に顔をつける。
「ぷはぁ」
桶から顔を出し、顔をバシャバシャと洗った。
「ふぅ……」
少しだけスッキリとした。
「ありがとう……」
「いえいえ!これくらいお安い御用ですよ!」
顔を洗い終えた水の入った桶を僕は罅隙へと渡し、罅隙はそれを異空間収納へと仕舞った。
「私が受けた恩に比べればこれくらいなんともありません!」
「そう言ってくれると嬉しいよ……さっきはごめん。冷たくあしらって」
「いや……ハイテンションでアウゼスが朝弱いのを忘れていたあたいが悪いんだ」
「うん。そうだね」
僕はギリアのその言葉に頷いた。
「えぇ!?そこを肯定するのかい?」
「うん。事実だからね。ほら!早く試練に行かなきゃだよ?遅れちゃうよ?」
「……調子の良い奴だな……それでこそアウゼスだ!いつものミステリアスな雰囲気に戻ったな!」
「ふふふ」
僕は不敵に笑う。
「さて。朝ごはん何食べる?」
「聞くのはそこかよ!」
「朝ごはんは大事だろ!朝ごはんも食べずに力強く試練に挑戦出来ると思っているのか!」
「まぁな!」
僕の言葉にギリアが頷いた。
「うーん。朝はサンドイッチがいいな!」
「じゃあ、そうしようか」
「私もそれで構いません」
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