第11話

「ドワーフの持つ固有スキル。いや、種族スキルか。それが何かというと、『分霊』というかなり変わったスキルだ」


 ……分霊?聞いたことのないスキルだ。

 僕の中に存在している何万人の記憶に一切ない。ドワーフには特殊な種族スキルがあるというのは知っていたけど……まさか完全に知らないスキルだとは……。

 基本的に種族スキルとか言っておきながら誰かが固有スキルとして持っている場合がほとんどなので、数万人の記憶を持つ僕が聞いたこと無いスキルなど、ほとんど無きに等しい。

 

「どんなスキル?」


「あぁ。簡単に言うと自身の武器に祖先の魂を降ろすスキルだ」


 魂を降ろす?予想を超えたそのスキルに僕は内心首を傾げる。

 吸血鬼の吸血と同じような原理か……?吸血鬼が自身の血を器として他者の魂を血として保管しているのと同じように魂をなにかの器に入れて保管し、それを武器を降ろすって感じか……?

 魂に干渉する系統のスキルは吸血鬼以外で見るのは初めてだ……。


「それで問題になってくるのは祖先の魂に認められなきゃ、このスキルを使えないということだ。祖先の魂が認めたドワーフの持っている武器だけに降りてきてくれる」

 

 ……祖先の魂に感情が残っている?そんなわけがないだろ。何年もの間魂だけの存在で自我を保ち続けるなど不可能だ。


「そして、祖先の魂に認めてもらうために行うもの。それが試練なのだ」


 ……試練をクリアしないと手に入らないスキル……一体どんなスキルなんだ?

 どういう原理……試練って吸血鬼の血を飲む試練じゃないだろうな?


「……この試練には命の危険も伴う。祖先の霊に認められなければ最悪死ぬことすらあるのだ。……それでもやるか?ギリア」

 

 ……ねぇ。吸血鬼の血を飲む試練じゃないよね?大丈夫だよね?すっごく心配なんだけど?

 吸血鬼の血に適応出来なくて死んでいるわけではないのよね?

 ……吸血鬼の間に戯れに自分の血を人間に飲ませて、どうなるのかを見る、という遊びが昔流行ったんだけど……その延長線じゃないよね?


「当然だ」

 

 ドワーフ王の真っ直ぐな質問。それに対してギリアはきっぱりとそう断言した。


「命も賭けれぬ戦士など無価値でしかない」

 

 ギリアは隔絶とした覚悟をもって告げる。


「よく言ったッ!いいだろう!」

 

 それに対してドワーフ王は満足げに、力強く頷く。


「今ここにッ!祖先の霊に認められし王、ドワーフ王である俺がお前を一人のドワーフ戦士として認め!試練への挑戦を許可する!」

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