第10話
ドワーフ王国。
巨大な洞窟内部に作られている大国。
その一番奥。
そこには大きく、威厳に満ち溢れた巨城が建てられていた。
ものづくりを得意とするドワーフたちの全力をもって作られたこの巨城の見た目は芸術品のようだった。
そんな巨城の中に僕とギリアと罅隙がドワーフ王の後を追って入っていく。
そして、一階から地下へと降り完全に人の気配がなくなった奥。そこに存在している一つの部屋の中に入った。
「ここだな」
「……へぇ」
「すばらしい」
「こ、ここは……?」
その部屋の中。そこには漠然とした清純なる力が貯まっていた。
部屋の中はとてもシンプルな作りである。
正方形で、広いとは言い難い部屋。そこに置かれているのは一つの大きな机と二つのソファー。
壁にも床にも装飾らしい装飾もない、実に殺風景なものだった。
しかし、天井には何らかが描かれた壁画のようなものが作られていた。
そして、机の上には3対の羽を持った天使のような像が置かれている。
その像を囲うにようにして力が渦巻いている。……その力は少し、吸血鬼の、アンデッドの力に近かった。
吸血鬼、アンデッドの力から一切の汚れを取り払い、清純さだけを抽出したような……。そんな感じだ。
なんとなく……良くはわからないけども、僕はあの像への憧れと嫉妬を覚えた。
「まぁ。座れや」
ドワーフ王はそう告げると、実に偉そうな態度で奥のソファーへと腰掛けた。
「ん」
「おうとも」
「はい」
ドワーフ王のその言葉を聞いた僕とギリアと罅隙はソファーへと座った。
僕が真ん中。その両脇を占める形でギリアと罅隙が腰掛けた。
……なんで?
普通、ここは真ん中に座るべきなのはギリアじゃない?関係者でない僕が真ん中に座るものではないと思うのだけど……?
「何から話すものか……何を話せばいいかは知っているものの、こうして話すのは初めてでな」
ドワーフ王は若干の躊躇いと悩みを見せながら口を開き、言葉を紡ぐ。
……。
…………。
ちょっとまって!?一体いつ僕は服を着させてもらえるの?未だに僕もドワーフ王もふんどし一丁なんだけど!?
今、こんなシリアスそうな場面でふんどし一丁の男たちが向かい合って座っているんだけど?
こんなにカオスなことある……?
「そうだな……」
そんな僕の考えなど知る由もない、知ろうともしていない、知る必要もないドワーフ王は話し始めた。
……なるほどねぇ。
どうやら……僕は服を着させてもらえないようだった……ちょっとだけ寒いのだけど……。
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