第7話

「なんで……」

 

 僕は何故か上半身裸、ふんどし一丁の姿で刀を持って立ち、呆然と誰にも聞こえないような声量で呟いた。

 なんで僕はこんなことをしているのか。


「はっはっは!行くぞ!若人!俺に勝ってみせろ!」


「……勝ったとて」

 

 そんな僕の目の前に立っているのはドワーフ王。同じくドワーフ王も上半身裸、ふんどし一丁スタイルであり、その手には大きなハルバードが握られている。


「行けー!!!坊主ッ!!!」


「王様!格の違いを見せつけてください!」


「うーん。ちょっと細いわね……」


「確かに筋肉量が足りないわね」


「ちゃんと筋肉もついているし、比率も素晴らしいんだけどね」


「坊主!大穴狙いで、お前にかけているんだー!!!勝ってくれ!!!」


「……いや、お前3日分の食料をかけるのはヤバすぎだろ……飲みすぎだ……」


 そんな僕たちを囲むように酒を持ったドワーフたちがたくさん囲んでいる。……僕を賭けの対象にしないでくれ……。


「てへっ」

 

 こんなことになった原因であるギリアはぺろりと舌をだしている。……なんで僕がこんなことを……面倒……。


「ルールは、一度地面に倒れた方が負け、でしたよね?」


「あぁそうだ!流石に殺すわけにはいかないからな!」


「……そもそも国王陛下その人に刀を向けるとか嫌なんだが……」


「構わぬ!!!武器をうち、道具を作り、戦い、酒を飲む!それこそがドワーフよ!その王たる俺が戦わずしてどうする!」


「はぁー」

 

 僕は体育会系ノリ、脳筋思考にため息を吐く。

 

「開始は?」


「お?……そうだな。決闘用の特別な道具もあるのだが、それを使うのはフェアじゃないからな……普通にコインが落ちたときにしようか」


 ドワーフ王がポケットからコインを取り出す。


「わかった。そのコインが落ちた時、だね?」


「おうよ!ほい、公平性から俺が投げぬ方が良いだろう」

 

 ドワーフ王はそんなことをのたまい、審判を務める人に向かってコインを投げる。

 そんなコインに向かって僕は手に握っていた小石を飛ばす。

 僕の投げた小石にぶつかったコインは地面へと勢いよく落ちる。


「は?」


 ドワーフ王が驚きに固まったその瞬間に僕は『アクセル』を発動し、地面を駆け抜ける。


「ぐっ」

 

 僕はそのままドワーフ王の太い足に容赦なく斬りかかった。

 だが、あくまで模擬刀であり、斬れないように作られた刀ではドワーフ王の足を完全に切り落とすことは出来ず、途中で止まってしまう。

 僕は刀から手を離し、ドワーフ王から大きく距離を取った。

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