第6話

「大きいですね……」


「ここは我らドワーフの最初にして最後、最難関の侵略者を食い止める砦だからな!」

 

 僕たちが乗っている馬車は巨大な鉄の扉の前に止まっていた。

 ……随分と分厚く、固そうだ。それに色々な加工も施されている。

 これを打ち破るのは至難の技だろう。全力の僕でも一撃では破壊出来ないだろう。最低二撃はいるね。普通の騎士団なんかじゃ打ち破れないだろうな。

 ガンジスを抜いた異端審問官でもかなりの時間をかけそうだ。

 終焉騎士団ならスムーズにこじ開けるだろう。

 ……ガンジスなら一瞬で粉だろうな。


「お?ギリアの嬢ちゃんじゃねぇか?里帰りか?」

 

 鉄の扉の前で門番をしていたドワーフの男性が馬車に近づいてくる。

 そのドワーフは地球でのイメージ通り背が小さいずんぐりむっくりの体系で、肌は褐色で同じ髪と瞳の色を持っている。

 体を守る重厚の鎧に、巨大なハルバート。ものすごく強そうである。


「おうよ!試練を受けたくてな!」


「おぉ!!!試練を受けるってか!そちらのお二人さんが共に受ける仲間か?」


「おう!自慢の仲間たちだぜ?」


「かぁー!なるほどなぁ。しっかし両方とも細いなぁー。そんなで戦えるのか?」


「いや、あのすみません……私はあまり強くはないんです。本当に強いのはこっちです」

 

 罅隙が僕のことを指差す。……罅隙だってそこそこ戦えるよね?


「おう!アウゼスはすげぇんだぞ?勇者以上!ドワーフ王ともいい勝負をすると思うぞ!」

 

 え?ドワーフ王といい勝負?吸血鬼状態ならともかく、人間状態なら勝てないんだけど?

 ドワーフ王国は、最も強く賢いものが王になる国なのだ。強いものは賢いというのがドワーフの特徴だ。すごいよね。

 ドワーフの中で最強の存在と人間状態の僕を比べないでほしいんだけど?


「マジか!?ドワーフ王とか!?そりゃすごい自信だな!」


「当たり前よ!あたいの自慢の仲間だぞ?それくらいの実力はあって当然だろ?」


「良いことを聞いた!じゃあギリアの嬢ちゃんの仲間とドワーフ王の戦いをセッティングしようか!血肉の踊る戦いは良い酒のつまみになる!」


 そんなことを言いながらドワーフの男は巨大な鉄の扉を通り抜け、走り去っていた。

 ……え?

 戦わせられるの?僕。ドワーフ王と?え?なんで……?僕何かした?


「ははは」

 

 ゆっくりとギリアが僕の方へと振り返ってくる。

 その表情にはなんとも言えない笑みが浮かんでいる。


「ごめん。戦うことになっちまった」


 ギリアがぺろりと舌を出し、僕に対して軽い謝罪を行った。


「おい」

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