第56話
「なるほどな」
いつもの秘密の会議室。
僕はそこで、ベルモンド、ガンジス、バングの三人に洞窟であったことについての報告をしていた。
「……サーシャの嬢ちゃんは一皮むけたか」
「あれはすごいかったよ。多分一桁台の終焉騎士には及ばないかもだけど、それ以下の序列には勝てるかな?」
「ほぅ……あの小娘が」
僕の一言を聞いて
「まぁサーシャの強さについてはここらへんで。……一番重要なのは悪魔崇拝者たちだよ……ヤバいのは予想していたけど、思っていたよりも深刻だった」
僕は割と真面目な表情を作り、告げる。
「悪魔崇拝者の手は思っていたよりも伸びてた。吸血鬼とのコネはもちろん。ミリア小国、アルメニア共和国、キネスタ王国、ミデスタ連邦はすでに悪魔崇拝者に国の実行権を握られているような状態。アルメシア帝国も、なんか手が伸びている」
「なっ!?アルメシア帝国もか!?」
「うん」
「それは……想像以上だな」
4カ国は大した国力もない中小国であるが、アルメシア帝国は別。アルメシア帝国はかなりの大国なのだ。
そんな大国にも手が伸びていると聞けば驚くだろう。
「次に悪魔崇拝者たちの神とやらだな……アルミデウス大司教の記憶を見た感じ、多分信仰対象は吸血鬼の封印体だな。……かなりの力を持った。確実に僕よりも強い。というか、底が見えない」
「……お前でも底が見えぬほどか」
「私であれば何の問題もなく神の膝下まで確実に返してやれるが、他の人では不可能か」
「……っ」
僕の言葉に三人が眉をひそめる。
僕だってかなりの強さを持った吸血鬼だ。そんな僕でも底がわからない吸血鬼となってくるとかなりヤバい吸血鬼ということになる。確実にノーブルの域には至っているだろう。
「それに、危険なのはこの吸血鬼だけじゃない。悪魔崇拝者たちそのものも強いし、あのタコ足の化け物みたいなもんを作ることが出来るみたい」
「お?そうか。……お前はあのタコ足についての情報も得たのか」
「うん。そうだね。あぁ……ちょっと報告しなきゃいけないことが多すぎるな。うん。後で書面にして提出するわ。まだ記憶を得たばかりで混乱しているから」
アルミデウス大司教の記憶の濃度が濃くて、胃もたれしている。
まだ完全にまとまりきっていない。
「……前から気になっていたんだが、そんなに記憶の定着には時間がかかるのか?」
「あ?」
僕はベルモンドの疑問に反射的に喧嘩腰で答えてしまう。
「……普通に考えてさ。一瞬でそいつが生きてきた全ての記憶と、抱いてきた感情を一気に味わうんだよ?まともなやつなら狂って終わりだよ……吸血鬼は別に、精神構造は人間と似ているのだから。まともな吸血鬼は記憶を喰らうことがないのはそれが理由。人間の守護者になるそんな狂った、すでに壊れている僕だからこそ出来ることなんだよ」
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