第54話
「あ……あ……あ……」
僕の手のひらの中でアルミデウス大司教があえぐ。苦しそう。
そんなアルミデウス大司教に向けて僕はゆっくりと自身の血を染み渡らさしていく。アルミデウス大司教を喰った時、他の吸血鬼の血が混じっていたら困る。
「何故……何故ッ!吸血鬼がァ!!!」
「うーん。なんで君が僕をそんなにも嫌うのか。君の神とやらだって吸血鬼だろう?」
「違うッ!!!」
僕の言葉に対して、アルミデウス大司教は食い気味に噛み付いてくる。
「我が神はッ!!!吸血鬼を滅ぼすために生まれたのだッ!他の吸血鬼とは違うッ!別だッ!!!暗闇の中……さまよう人間の希望の光となるのだッ!!!」
「……あっそ」
僕は興味なさげに呟く。
希望の光。それを追い求めたくなる気持ちもよくわかる。……この世界にはあまりにも希望が少なすぎる。
……ガンジス以外まともにエルダーヴァンパイアと戦えないのだ。
ノーブルヴァンパイアが5体いればガンジス以外の人類を滅ぼせるだろう。
……ガンジスはおかしいので、ノーブルヴァンパイア5体を相手にノーダメで完勝するほどの力を持っているのだけど……本当に人間なのかな?
だがしかし、その希望の光を吸血鬼に求める。
そんなの間違いにもほどがある。
吸血鬼が人間を救うとか……どうせ気まぐれだ。簡単に捨てられる。まぁ、そもそも吸血鬼が人間を救うという思考回路に至るとは思えない。
もし。
もしもいるとするのならば僕のように壊れた存在だろう。
「まぁ良いよ。どうせ君はここで死ぬしね」
「……ひっ!?……嫌だ……嫌だッ!!!私はまだ何も出来ていないッ!何も返せていないッ!何もッ!何もかもがッ!出来ていないのだッ!ダメだッ!まだ死ねない……!!!こんなッ!こんなところでッ!!!」
アルミデウス大司教は恐怖に顔を引き攣らせて、わめき続ける。
「あぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!死ねないッ!!!そんなの許せれないッ!!!神よッ!!!神よッ!!!私を救い給えッ!!!あなたの敬虔なる信徒を救い給えッ!!!愛をッ!愛をッ!!!!!私に愛を!愛にぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
「うるさいよ」
「カヒュ」
僕はアルミデウス大司教の喉を押しつぶす。
「愛、愛。醜いったら仕方ない。……お前は一切神とやらに愛されていないよ」
「……ッ!?」
ひしゃげる。
一人の人間が。
跡形も残さず潰れ、圧縮され、ただの血溜まりとなる。
その血溜まりに吸血鬼の血は混ざっていない。
「いただきます」
血は僕の中へと入っていた。
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