第51話
地面がえぐれ、洞窟全体が揺れる。
サーシャの長剣がキーネだった化け物を切断し、キーネだった化け物はそれに対して自身の体を再生させる。
そして、キーネだった化け物はサーシャが纏っている薄い闇の防御を貫通して物理攻撃を当てる。
基本的にはキーネだった化け物が何も考えずに突撃し、それに対してサーシャが受けの姿勢でそれらの攻撃を捌き、的確なタイミングで反撃を行う。
相手の攻撃を受け身で受け、的確なタイミングで反撃を行う。
それは……キーネが得意としていた戦い方だった。
両者一歩も引かぬ熾烈な戦いが繰り広げられていた。
「はえー」
「行け!いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええ!!!」
そんな様子を僕とアルミデウス大司教は外野として観戦していた。
アルミデウス大司教は狂ったように叫びながら応援し、僕は気の抜けた様子でぼーっと眺めていた。
……黄昏の吸血鬼と呼ばれ、各国の首脳陣から恐れられている僕と、長年裏に隠れていた悪魔崇拝者たちの中でもかなり上位の存在と思われる枢機卿様は一体何をしているんだ?
だが、今僕にも、アルミデウス大司教でも出来ることは無いので仕方ない。
二人の戦いが凄すぎて今はただの人間でしかない僕も、出来損ないの吸血鬼の力にしか頼ることも出来ないアルミデウス大司教もついていけないのだ。
「しっ」
「うるぁッ!!!」
軽やかに飛び回って攻撃を加えるサーシャをキーネだった化け物が知性のかけらもなく追いかけ続ける。
そんな様子を僕とアルミデウス大司教は眺めていた。
……あぁ。お腹から流れている血が本格的にヤバいことになってきたよ?
「……っ」
サーシャの戦い方が変わる。
守りの剣を、攻めの剣へと。
強引に相手の守りを崩し、無理矢理にでも攻撃を当てようとしている。
「『ナイトメア』」
サーシャが闇魔法を発動させる。
意識を闇へと誘う闇魔法を。
「ぐぅ……」
一瞬。
ほんの一瞬だけキーネだった化け物の意識が闇へと飛ぶ。
「終わり」
その一瞬を見逃すサーシャではない。
頭の位置にあった
それでも、キーネだった化け物は倒れない。
次に狙うのは、心臓部にあるボロボロのキーネの顔。
「ぐぁ!!!」
意識が覚醒し、逃げようとしたキーネだったがすでに時遅し。
すでに避けれない位置にまで長剣は迫ってきていた。
「……サーシャ……助け、て」
口が、開く。
心臓部にあるボロボロのキーネの顔が。
「……ッ」
一瞬。
サーシャの動きが止まる。
そして───────
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