第43話
「アウゼス君ッ!!!」
私は目の前で転がるアウゼス君を呆然と眺める。
「……ぐふっ」
アウゼス君の体が揺れ、口元から血が流れる。
「あ……あ……」
私は呆然と手をのばす。
一歩。
アウゼス君の方へと歩を進める。
「アウゼス君!!!」
それから。
堰を切ったように私の足は動き始めた。
恐怖で動かなかった足が、体が。深い絶望によって、無力感によって雁字搦めにされていた体が動く。
「アウゼスくっ、きゃっ!」
アウゼス君の方へと進んでいた私の体は捉えられ、宙へと浮かび上がる。
「……イヤッ!辞めてッ!」
私の体に巻き付いているのは真っ赤なぬるぬるとした気持ち悪い触手。幾つもの触手が私の体に巻き付いてくる。
視界を私を捉えている触手の主の方へと向ける。
私を捉え、アウゼス君を吹き飛ばした、気配の無い不気味な化け物の方へと。
真っ赤な体。その体から伸びる幾つもの赤い触手。足も、手もなく、ただただ触手だけが歪に絡みつき、体を動かす真っ赤な醜い肉塊。
気持ち悪い。
「ぐほっ」
私の口を押しのけて一つの大きな触手が口の中に入ってくる。
不快で、吐き気を催すような粘液がどろりと私の口の中に入り、中へと流れ込んでくる。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。なん、で……!私が……!
「あぁ!神よ!見てください!これがッ!これがッ!私の……!あなたへの愛ですッ!愛、なのですッ!!!」
耳障りな狂人の声が響き渡る。
「七つの聖なる巫女の力を取り込みし、偉大なる神は世界に祝福を与えんと復活する!あぁ!神の再誕に……!我々はまた一歩近づく!」
「……っ」
触手によって塞がれた私の口から小さな、小さな悲鳴が漏れる。
触手は私の服だけをきれいに溶かしていた。
あらわになる私の素肌を触手が這いずり回り、そして、それは私の大切な……大切な場所に到達する。
ゆっくりと私の服は溶かされていく。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。
こんな化け物に……!こんな化け物に私の……!私の純血を捧げるなんて……!
「神に……神の復活がため!神の眷属と闇の聖女の子供を捧げん!」
あぁ。
『闇』の聖女。
……誰か、の、その一言が私を貫き、染み渡った。
あぁ。
私の体から力が抜けていく。
四肢が無様に垂れ下がり、抵抗する気力を失う。
私は……ここで……この気持ち悪い触手の化け物を孕ませられるのだろう……。
ははは……。
なんという……あぁ……それこそ私に相応しい末路じゃない……。
触手が私の股間部を弄り……そして──────
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