第41話

 さてはて。

 かっこよく告げたは良いものの……一ミクロンも勝てる気がしない。普通にストレート負けする気がする。

 いや、気がするというか負けるんだよなぁー。

 唯一の勝ち筋がサーシャを覚醒させることなんだけど……出来る気がしないんだよなぁ。

 ゲームで主人公がどうやってサーシャを覚醒させたのか。僕覚えていないんだよね。どうしよう。

 とりあえずやってみるしかないんだけど。


「神の奇跡」

 

 アルミデウス大司教の一言。

 それを受けて空間が裂け、裂け目から一つの禍々しい腕が姿を現す。


「……どこが神の奇跡だよ。明らかに神サイドの見た目じゃないだろ……」

 

 その禍々しすぎる見た目を見て僕はボソリと呟く。

 見た目的に言えば神よりもその敵。アンデッド寄り……というかあれ絶対吸血鬼関連だろ?力を暴走させた吸血鬼の力があんな感じだ。

 

「あぁ……哀れな……この世を蝕む神の名を語る愚か者に汚染されているとは……今浄化させてさしあげましょう」

 

 さっきまでの狂乱はどこへやら、痛く冷静に。自愛に満ちた視線をこちらへと向けてきながら言葉を綴る。


「意味わからないから」

 

 僕は地面を蹴って一気に肉薄する。

 禍々しい腕なんか無視して一気にアルミデウス大司教へと。


「無意味ですよ。アンゲルス様」

 

「くっ」

 

 僕に向かって予想を遥かに超えるほどの速度で振るわれる禍々しい腕をギリギリのところで回避する。

 流石に速すぎだが……ッここまでは……。


「『転雷神』」

 

 アルミデウス大司教の背後へと僕は転移し、刀を振るった。

 

 タンッ


 アルミデウス大司教の首がゆっくりと地面の方に落ちていった。


「やはりその魔法は便利かつ脅威ですね。初めて見る魔法なのですがそれは一体なんでしょうか?神の力を用いていないただの雷魔法に見えるのですが……」


「……っ」


 僕の刀は確実にアルミデウス大司教の首を斬り落とした。

 しかし、アルミデウス大司教は平然と喋り続ける。

 胴体を失った首が。その口が言葉を当たり前かのように紡ぐ。


「ふむ」


 アルミデウス大司教の体は地面に転がっている自分の首を拾い、再びはめ直す。


「私は神の奇跡によって死ぬことがないのです」


 ……やっぱりあの禍々しい腕をなんとかしないといけないか。


「それでは神の奇跡をその目に焼き付けなさい」

 

 目の前の禍々しい腕がブレる。

 衝撃。


「かはっ」

 

 僕はあっさりと吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられる。


「くそっ」

 

 たった一撃で戦闘不能レベルにまで追い詰められるほどのダメージを受けた僕に追撃を加えるかのように禍々しい腕は僕に向かってその力を振るう。

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