第38話

「きけ──────」

 

 咄嗟に叫んだミネルバの声が。


 ドォォオオオオオン!!!

 

 洞窟全体を震わせるほどの低い轟音によって掻き消された。

 自爆魔法。

 文字通り自分自身を爆発させる無属性魔法。

 自分の全てを爆発の威力へと変換するこの魔法はかなりの威力を持っている。誰でもお手軽に使える最強魔法。

 僕はこの自爆魔法を義務教育にするべきだと思う。この世界のゲリラ戦はすごいことになっていそうだ。


「ぐっ」

 

 自爆魔法によって生み出された強い衝撃が僕の張った結界にぶつかる

 そして──────僕の結界はあっさりと破壊されてしまう。


「あぁ!」


「きゃあ!」

 

 爆風によって僕もサーシャもあっさりと吹き飛ばされ、壁へと叩きつけられる。


「いっつ……」


「あッ!辞めてッ!」

 

 僕よりも少し離れた所へと飛ばされていたサーシャが黒づくめの男に捕まってしまう。


「やっば……!」

 

 慌てて助けに向かおうとしたところ、目の前に三人の黒づくめの人たちが現れ、僕の行く手を阻む。


「……っ」

 

 僕は息を飲み、足を止める。


「助け……!」


 サーシャがこちらへとすがるような視線を送ってくる。

 

「サーシャッ!!!」


「助けてッ!離してッ!離してよッ!」


 いつものおどおどとして、小さな声のサーシャとは思えない声で叫んでいるその声。悲痛な叫び声が段々と遠くなっていく。

 サーシャが奥へと運び込まれているのを僕はただただ見ていることしか出来ない。……闇の聖女の命は諦め、すべての情報を獲得する方向へとチェンジするか?

 僕が考えを巡らせていると、


「行って」


 ミネルバが駆けつけてくれる。

 僕の目の前の黒づくめの人たち三人をあっさりと一蹴したミネルバがそう告げ、ポーション渡してくれる。


「魔力を回復させてくれる終焉騎士団の特別な一品だ。特別にやる。ここは任せて。先に行ってほしい」


 ミネルバはそう告げ、いつの間にか数十人へと増えていた黒づくめの人たちへと剣を向ける。

 ……それは死亡フラグだよ?まぁ、ミネルバなら負けないだろうけど。


「わかった。行ってくる」


「うむ。任せた」


「任された」

 

 僕はポーションを流し込み、魔力を回復させてから黒づくめの男に攫われていってしまったサーシャを追うため、僕は地面を蹴った。

 雷を纏った僕は、人間状態でも結構速い。

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