第37話

「……あ」


 僕の隣で一生懸命頑張っていたサーシャがポツリと声を漏らす。


「ちっ」

 

 サーシャの方へと視線を送った僕は舌打ちを吐く。

 僕に瞳には、何人もの人からの猛攻を受けていたサーシャがとうとう耐えきれなくなり、相手の剣を受けそうになっているサーシャが映っていた。

 ……多分殺されることはないだろうけど……。


「ふぅー。『転雷神』」

 

 僕は『転雷神』を使い、サーシャのすぐそばへと転移、サーシャへと振り下ろされる剣を自らの刀で弾く。


「気をつけて」


「あ、……え、ありがと……うございます」


「ん。気にしないでいいよ」

 

 僕は内心の焦りを悟られぬようにしながら刀を構える。

 転雷神。

 めちゃくちゃ強い魔法ではあるが、その分必要になる魔力の量は膨大。吸血鬼であればそんなこと一切気にしないで好き放題出来るくらいは魔力があるんだけど、人間状態ならばその限りではない。転雷神一発で魔力のほとんどが持っていかれてしまう。

 魔力のほとんどを失った現状でどれだけ頑張れるか……。


「しっ」

 

 魔法の使用を出来るだけ控えながら相手の攻撃を防ぐ。

 

 くそっ。アンチマジックにだって結構な魔力を使う。これ以上は結構キツイぞ……?


「遅れた」

 

 ギリギリの戦いを演じていた僕とサーシャのもとに、一筋の風が巻き起こる。


「風閃」

 

 幾つもの旋風が巻き起こり、僕とサーシャの近くに居た黒づくめの人たちを弾き飛ばす。


「ごめん……遅れちゃった」


「大丈夫。間に合ってくれたのなら……後は任せても良いよね?」


「うん。大丈夫」

 

 ミネルバは終焉騎士団の序列第二位。序列第一位であるバングにも劣らぬ実力を持っている。

 ミネルバであれば彼ら相手でも勝利出来るだろう。


 ゲームで負けたのはあくまで奇襲による不意打ちの一手であり、バングとミネルバが少し離れたところにいたからこそのものだったのだから。

 正面対決であればミネルバが数十人が相手でも勝てるだろう。


「しっ」

 

 ミネルバは一気に距離を詰め、首を跳ね飛ばす。

 風魔法で自身の速度を底上げしているミネルバの速度に黒づくめの人たちはついていけず、一方的に攻撃を受けている。

 まぁそれでも攻撃を防ぎ、反撃している人もいるからすごいけど。

 

「……すごい」

 

 隣に立っているサーシャがポツリと呟く。

 

「終焉騎士って強さバグっているよな……。あれで対アンデッド特化とか意味わからない……」

 

 僕が完全に安心しきって関心していると、嫌な予感が働く。


「……ッ!!!」

 

 僕は慌てて防御魔法を展開する。

 黒づくめの人たちの一人が、いや、その全員が自爆魔法を発動させようとしていた。

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