第36話

 緊迫した空間。

 それを最初に破ったのは相手さん。黒づくめの人たちだった。


「……」

 

 彼ら、彼女らは無言のままこちらへと斬りかかってくる。


「めんど……『アクセル』」

 

 小さな声でボヤきながら僕は迎え撃つ。

 振るわれる武器を一つ弾き、そのまま流れるように他の人たちの武器を弾いていく。

 彼ら、彼女らが扱う武器は剣、斧、槍、弓、鎌など多種多様に存在していて、それを捌き切るのはキツイものがある。


 僕とサーシャがギリギリのところで近距離戦闘をこなしていると、遠距離から魔法が飛んでくる。

 ちらりとサーシャへと視線を送る。

 無理そうだな。


「魔法は任せて」


 僕はギリギリのところで必死に耐えているサーシャへと告げる。サーシャに


「闇霊よ、我に力を。魔を打ち払わんばかりの大いなる光を我が手に。『アンチマジック』」

 

 久しぶりに詠唱を唱えて魔法を発動させる。

 僕が魔法によって生み出した光り輝く盾は彼ら、彼女らの魔法を打ち消した。これは闇魔法の一種だ。


「「「……っ!!!」」」

 

 本来は闇に属する者、アンデッドと一部の魔物にしか使えないはずの闇魔法を僕が使ってみせたことで目の前の黒づくめの人たちが動揺しだす。

 まぁそれも当然だろう。闇魔法を使える人間なんて闇の聖女くらいなんだし。


 ちなみにだけど、僕は死霊術師とある実験の末に使えるようになったという設定だ。


 死霊魔術師。アンデッドについての研究をしているおっかない連中だ。

 死霊魔術師たちは数が少なく、また中々姿を見せないためその実態は謎に包まれている。そのため、死霊魔術師の実験の末……と話したら案外信じてもらえるのだ。


 僕が闇魔法を見せている理由……それにもちゃんと理由がある。

 まだ僕が束縛血界を手に入れていなかった時代に、どんなに隠していても漏れてしまうアンデッド特有の死の気配。その理由が闇魔法を使えるから、という無茶苦茶な理由で押し通していたからだ。


 最初のパートナーが終焉騎士の一人だったからこそ出来た荒業だ。アンデッド絶対殺すマンの終焉騎士団の奴隷がアンデッドのハズがない!という絶対の信頼のおかげだ。いやー、よくもまぁ僕は終焉騎士団の奴隷になれたよね。今思い出しても奇跡だと思う。

 

「魔法は任せてくれて構わない!サーシャはなんとか耐えて!耐えていれば後でミネルバがなんとかしてくれるだろうから!」

 

「はい!」

 

 僕の言葉にサーシャが頷いた。

 ミネルバは……うん。どうやら4分の3くらいは殲滅している。

 後少し、かな。

 このまま耐えれるかな?

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