第35話
この場を走る金属音。
サーシャに向かって振るわれた黒づくめの男が持っている剣とそれを受け流すように振るった僕の刀がぶつかりあった音だ。
嫌な予感。
それは完璧な形で働いた。一切気配も、殺気も感じ取れなかったけど、なんとなく危険を感知し、動くことが出来た。
「……誰?」
僕は目の前にいる黒づくめの男を睨みつける。
黒づくめの男は何も喋らず、そのまま静かに僕から距離を取る。
「なるほどね」
「な……な、に?」
「気をつけて。サーシャを狙っている」
僕は狼狽しているサーシャに向かってそう告げる。
黒づくめの男たち。
一応かなりの強さを持っている僕に対して、剣を振ったことを悟らせなかったこいつは……間違いなく強いだろう。感が働いていなければきっとやられていた。
彼の強さ。
終焉騎士には劣るが、それでも単独でなんとか戦いになるくらいには強いだろう。
「陽動、か。随分なことするじゃん」
ゲームで終焉騎士団に奇襲を仕掛けた者たち。その内の一人が今ここにいるこいつだろう。
あの大量の黒づくめの人たちはミネルバを引き寄せるための陽動。こいつらの目的はサーシャ、か。
「……あ、アウゼスくん……」
サーシャが僕の名前を呼ぶ。
「周りに……」
サーシャの言うとおりに周りを見渡すと、僕たちを囲むように立っている黒づくめの男、女たちがいる。その数は20名くらいだろうか。
終焉騎士に匹敵する戦力を20名。ただの犯罪組織が集めている戦力として考えればかなり異常だろう。
……それだけ黒づくめの人たちはガチ、ということか。
黒づくめの人たちの視線は、意識が、僕ではなくサーシャに向いている。僕には一切の興味を抱いていないようだ。
マリアお姉ちゃんを襲ったときもそうだけど……。なんでこいつらは聖女を狙っているんだ?その目的は何だ?
……あれ?殺気がない?
僕は黒づくめの人たちから感じる雰囲気に首を傾げる。
いや、今考えることじゃないか。
「んー。面倒。やるかぁ」
僕は刀を構える。
「戦える?」
僕はサーシャへと視線を向ける。
「は……はい!」
サーシャは元気よく頷く。
「オッケー。じゃあやっていこうか」
僕は刀を構え、サーシャは自分の得物である十字架を模した、白銀の長剣を異空間収納から取り出して構えた。
僕たちを取り囲む黒づくめの人たちも戦闘態勢に入り、緊迫した空気が流れた。
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