第34話

「……ッ」


「クソ……!」


「行けッ!負けるな!」


「そこだッー!!!」


「ダメだッ!罠だ!」


「我が神のためにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 

「ふんっ!」


 蹂躙劇。


「ふわぁ」


「き、緊張感が……」

 

 目の前で引き起こされている蹂躙劇を僕は一切の緊張感なくぼーっと眺める。

 サーシャはそんな僕を見て少しだけ呆れたように呟く。


「いや、こんな状況で緊張感とか言われても……今の僕たちにやることなんてないしねぇー」

 

「……あ、は……い。そう、ですね」

 

 僕の言葉にサーシャが頷く。

 今、僕たちの目の前で目を覆いたくなるような酷い蹂躙劇が引き起こされている。

 黒づくめの人たちが各々の武器を持ち、必死に抵抗し、それをミネルバが一蹴する。戦いにすらなっていない。


「ふわぁ」

 

 全ての敵はミネルバが倒してくれるので、僕たちの仕事はない。


「むぅー。数が多い」

 

 息一つ切らさず敵を倒しながら進んでいるミネルバがぼそりと呟く。

 

 僕たちがここに侵入してから今に至るまで。

 ずっと黒づくめ人たちが僕たちに向かって特攻を仕掛けてきていた。

 

 僕たちが築いているのは屍の道。

 転がっている屍の数はすでに千に届きそうだ。……一体どれだけいるんだ?


 そんな中。

 たくさんの黒づくめの人たちに襲われる中、ミネルバの圧倒的な活躍の元、ちょっとずつ前へ前へと進んでいっていた。


 ……うーん。なんかあまりにも黒づくめの人たちが弱すぎない?

 一応ゲームでは数十人単位で終焉騎士団に奇襲をしかけ、一人を誘拐するレベルの強さを持っていたはずなんだけど……?

 こんなにミネルバが無双できるほどの力の差はなかったはずなんだけどなぁ。

 

「開けた場所に出る」

 

 僕がそんなことを考えている間に、今までの狭い道から大きく開けた場所に出る。

 大きく開けた場所。洞窟。

 そこには数えるのも馬鹿らしくなってくるくらいたくさんの黒づくめの人たちがいた。


「えぇー」

 

 僕の口からげんなりとしたような声が漏れる。あまりの多さに隣のサーシャは絶句し、ミネルバも眉をひそめている。

 ……めんどくさぁー。


「殲滅する」

 

 ミネルバが地面を蹴り、数多の黒づくめの人たちに向けて突撃する。

 

 人が跳ね、血が踊る。


 えげつな。

 僕は心の中でそんなことを考えながら異空間収納から一振りの刀を取り出す。和の国の鍛冶屋に打ってもらった業物だ。


「僕たちも援護しようかぁ」

 

 流石に任せきりにするわけにも行かない。

 ミネルバを手助けするために僕が動き出したその時───────


 嫌な予感が走る。

 

 キンッ

 

 金属同士がぶつかり合う音が響いた。

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